<金口木舌>名も無き家事と夫婦別姓 - 琉球新報(2021年6月30日)

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「タッパー神経衰弱」。何のことか分かるだろうか。「タッパーのふたと容器を正しく組み合わせる家事」のことをいう。「分かる分かる」と共感する人もいるのでは。コピーライターの梅田悟司さんが「名もなき家事」に付けた名前の一つ

▼4カ月の育児休暇の間に取り組んだ「名もなき家事」のうち、70個に名前を付けた。心身共に疲れ果てた日々を振り返り、こう書き記す。「終わりがない。達成感もない。誰かに誉められることもない」
▼トイレットペーパーの補充、排水溝の汚れ掃除。洗った食器を棚に戻す。そんな作業に追われる中で負担に気付いたのだろう。家事に追われる身ならば常々感じていること。当事者でなければ分からないことは他にもある
▼結婚時の姓の問題もその一つ。自分の身に降りかからない限り人ごとで済むだろう。旧姓を使いたいと願っても、夫婦別姓を認めない民法が壁となって、不条理を感じている
▼選択的夫婦別姓の議論が続いている。平等権や婚姻の自由に根ざす事柄だ。同姓婚を否定はしない。同様に別姓婚も認めてほしいと願う当事者の思いは、なかなか伝わらない
▼別姓を認めない法律の是非が問われた裁判で、最高裁は再び合憲判断を下した。内閣府世論調査では夫婦別姓賛成が、反対を大きく上回っているのに、最高裁は世論に背を向けた。「当事者無視判決」とでも名付けよう。