「(政界地獄耳) 世論とのズレ広がるばかり - 日刊スポーツ(2020年12月26日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202012260000088.html

★「あの時の繰り返しだ」。自民党ベテラン議員は言う。92年、元自民党副総裁・金丸信への東京佐川急便事件に関連する5億円の闇献金事件で東京地検特捜部は金丸の事情聴取をせずに略式起訴に。この対応に世論は激しく反発。霞が関の検察合同庁舎にペンキが掛けられる事件も発生し、特捜部は翌93年、金丸を脱税容疑で逮捕した。「あの時、検察は世論が離れていく怖さを知った。ところが時代が変わり検察官も公務員などと思うようになった。つまり法務省の行政官たち、赤レンガ派が現場を凌駕(りょうが)しているのだろう。現場はやりにくくなっているのではないか。または腰抜けになったかだ」。

★地検は前首相を嫌疑不十分で不起訴とし、公設第1秘書が、政治資金収支報告書不記載により略式起訴され、100万円の罰金に処された。秘書は辞職した。国民は2日間にわたる前首相の説明に納得などしていない。それは地検も同様だろう。切り崩す壁が厚かったのか。だが、国民の批判は怖い。25日、アリバイ作りのように鶏卵汚職事件で元農相・吉川貴盛の地元事務所や議員会館の家宅捜索に入った。

★また24日、賭博容疑で告発された黒川弘務・元東京高検検事長に対する東京地検の不起訴処分(起訴猶予)について、東京第6検察審査会は「起訴相当」と議決したと公表した。世論の批判をかわし、バランスを取ろうと検察も捨て身の動きだ。25日、立憲民主党副代表・辻元清美は前首相に「国民のなかには議員辞職に値するのではないかという声があること、承知していますか」と問うと、前首相は「承知をしております」と答えた。最終的には次期衆院選挙不出馬になるのではないか。そこまでがギリギリのせめぎあいだったろうか。同日、官房長官加藤勝信は会見で、国会答弁における「虚偽」の定義に関し「何をもって虚偽答弁というかは、必ずしも固定した定義が国会の中であるとは承知していない」と妙な援護射撃を行った。世論とのずれはますます広がるばかりだ。(K)※敬称略