(政界地獄耳) レガシーは政権運営失敗だけ - 日刊スポーツ(2020年8月20日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202008200000148.html

★首相・安倍晋三は17日の自称・日帰り検査で自宅に戻り19日、公務に復帰した。午後、官邸についた首相は「これから再び仕事に復帰して頑張っていきたい」と淡々と話した。政治家と病気については何が本当か全く分からない。病に倒れた政治家も多く、政治どころか歴史が変わったことまである。その分、当事者や周辺は平静を装うが、内心は薄氷を踏む思いで、情報をコントロールする場合もある。

★今回も、聞いてもいないのにお友達の自民党税調会長・甘利明がテレビ番組で唐突に「自分が休むことが罪だという意識まで持っている」と首相を休ませなければならないと言い出し、もう1人のお友達、副総理兼財務相麻生太郎は記者に向かって「147日も働いたことのない人に、働いた人のことを言っても無理なんだろうけど」と妙な理屈をつけて首相の体調を国民に知らせようという気もなく、けむに巻いて混乱させた。結局2人は首相が疲れているから休ませないとという小芝居を打っただけで、政府与党は首相の体調をコントロールすることができず、危機管理能力すらないことを露呈させた。

★だが、この先も政府与党の言い分では10月下旬まで国会は開かれず、党内は内閣改造の鼻薬をきかせ、解散説を定期的に流して批判を抑え込み、通常運転に戻ろうという腹だろうが、首相が休みなく働いているということを真に受けたとしても、経済は好転どころかアベノミクスが失敗していたことが証明され、コロナ対策は世界的無策として失笑を買う状態。国民が自衛策をとり続けて何とか拡大を抑えているだけだ。頼みの外交はコロナ禍で出かけて行けず、盟友・トランプ米大統領は選挙で勝てない可能性が高い。つまり通常運転でも社会や経済は元には戻らず、政権運営の失敗だけがレガシーとして残るのではないか。思えば第1次安倍改造内閣で安倍は、人事を終え、国会で「職責を果たし全力を尽くす」と所信表明演説を行った2日後、突如退陣した。その間1カ月。悪夢再びか。(K)※敬称略