(政界地獄耳) 口癖通り「進退は自分で」決められるか - 日刊スポーツ(2020年8月26日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202008260000104.html

★政治家と病気についていろいろな声が上がる。ここ最近では、病に倒れた大平正芳小渕恵三両首相があげられるが、側近たちは情報を管理し、元気を装う。だが、そんなやり方が危機管理として正しいと思うのだろうか。国民に対して本当のことを言わないことが正義や美徳と考えられる時代は、すでに終わったのではないのか。首相・安倍晋三の健康不安は拡大している。このやり方では第1次内閣で所信表明演説の直後に辞任を表明した唐突感と同じになる。

★側近たちは「あの時と全然違う。検査を続けていると情報公開している」と言うかもしれない。それならば毎週月曜日は検査があるのでしばらくは公務を休みたいと国民に説明すべきだ。決して20日立憲民主党国対委員長安住淳自民党国対委員長に訴えた「9月2日に衆院予算委員会の集中審議を開き、首相自らが説明するよう求めた」が本筋ではなく、共産党副委員長・市田忠義の「なに党であれ、どんな政治的立場の人であれ、健康問題に関わってそれをあげつらったり揶揄(やゆ)することは厳に慎むべきだ」が国民に沿った気持ちだろう。

★ただ、自民党内にもこれを政局にしようとする向きもある。こんな形で権力闘争が始まることを想定していなかったからかもしれないが、来月には内閣改造が行えるのか、行う考えがあるのかもはっきりとせず、政局として揺さぶりたい向きもあるのだろう。連続在職日数が大叔父の佐藤栄作を抜いて歴代単独1位となった日に、首相が「体調管理に万全を期してこれからまた頑張りたい」とコメントするのは何とも皮肉だが、働き方改革を首相自ら実践することを国民は非難しないはずだ。それよりもこの政権がいちばん苦手とする「丁寧に説明する」「説明責任を果たす」ことができずにいることが、この政権らしい、といえば、らしい。側近や取り巻きの説明はもういい。出処進退は自分で決めるというのも、首相の口癖ではなかったか。(K)※敬称略