(余録) いまから100年以上前のこと… - 毎日新聞(2020年8月25日)

https://mainichi.jp/articles/20200825/ddm/001/070/096000c

いまから100年以上前のこと。ウィルソン米大統領の就任式を翌日に控えた首都ワシントンで、女性参政権を求めた大規模なパレードがあった。そこに黒人女性の参加を認めるかどうかを巡って論争が起きた。
「白人女性がアフリカ系アメリカ人女性とともに行進することをこばみ、列から外れる旨、ポールに申し出た」(「アメリカのフェミニズム運動史」より)。ポールとは、女性参政権運動の指導者の一人、アリス・ポールのこと。パレードは結局、黒人女性も参加して行われ、大きな反響を呼んだ。
この本の著者、栗原涼子さんによると、「女性とアフリカ系アメリカ人。二つの権利獲得運動には微妙な緊張関係があった。白人女性の間には、アフリカ系アメリカ人に焦点が当たると、女性の問題がかすむという懸念もあった」という。
人種間の対立などさまざまな問題を抱えながらも運動は実を結び、パレードから7年後の1920年、女性参政権を認める憲法修正19条が発効した。ちなみに日本で女性参政権が実現したのは45年の太平洋戦争終結後だ。
あす26日は、米国の女性参政権獲得から100年。その年にカマラ・ハリス上院議員が黒人女性初の米副大統領候補に選ばれたのは、まさに歴史的といえる。
スイスのシンクタンク世界経済フォーラム」は昨年末の報告書で、世界で男女格差が解消されるには、99・5年かかると予測した。ここまでが100年で、さらに100年近く? そんなに時間をかけていいはずがない。