<金口木舌>弱者を切り捨てない - 琉球新報(2020年7月27日)

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「学校で子どもたちに毎日温かい給食を出すこと」。北欧の島国アイスランドで2009年に発表された提言書に書かれている。同国は当時、世界経済危機のあおりを受けて国家財政が破綻状態に陥り、政府が緊急事態宣言を出していた

▼政府とNGOなどが団体「福祉の監視」を設立し、社会的弱者にしわ寄せが行かないよう提言書を出した。失業率が4倍に跳ね上がり、国の医療費支出が2割削減される中でも福祉の切り崩しを許さなかったという
厚生労働省国民生活基礎調査で、子どもの貧困率が13・5%だった。新型コロナウイルスの感染が拡大する前の2019年時点の調査で、現状はより悪化していると考えられる
▼雇用情勢の悪化で生活保護の申請件数も4月以降、全国で急増している。一部の自治体では無料・低額宿泊所への入所を申請の条件としたり、半ば強制したりする事例もあるという。無料・低額宿泊所の中には、劣悪な環境に住まわせ保護費から高額料金を取る悪質な「貧困ビジネス」も存在する
▼2年前、アイスランドで取材した女性は言っていた。「経済危機が来ても、私たちの国は誰も切り捨てない」
▼混乱の中で埋もれがちな弱者の声を拾い、可視化する取り組みが重要だ。報道機関はもちろん行政、民間が目を光らせておかねばならない。弱者を切り捨てない社会を作るために