<金口木舌>市民の宝を捨てるのか - 琉球新報(2019年12月11日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-1040074.html
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「よーいドン」の号令よろしく、地域の代表が顔を前に向けたまま後ずさりするさまを見るようだ。ここはグラウンドではない。市自治基本条例の存廃を審議する石垣市議会の議場である

▼市政与党は条例を廃止したいという。「いくつかの不備がある」というのが理由。ならば改正すればよいはずなのに、いきなり廃止とは荒っぽい。自治の後退と言われても仕方あるまい
▼多くの市民は戸惑っていよう。なぜ条例を廃止しなければならないのか判然としないのだ。自衛隊配備への賛否を問う住民投票の根拠となるような自治基本条例はやっかいだというのでは、誰も納得はしない
▼条例前文に「市政の主権者である市民が地域のことを自ら考え、自らの責任の下に自ら行動して、この地域の個性や財産を生かした市民自治によるまちづくりを行うことが必要です」とある。施行から9年。今こそ、この理念に磨きをかける時ではないか
▼敗戦直後の混乱の中から自治回復を目指した「八重山自治会」が生まれた地である。空港建設を巡って住民間の対立を生んだ地でもある。さまざまな歴史と経験を経て生まれた自治基本条例だ。簡単に手放せるものではない
▼批判を承知で自治から後ずさりする議員諸氏はどこに顔を向けているのか、何を見ているのか説明してほしい。市民の宝を捨て去るような行為を市民は許さない。