[大弦小弦]行っていいものかどうか、ずっと迷っていた - 沖縄タイムス(2020年3月9日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/544549
http://web.archive.org/web/20200309001542/https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/544549

行っていいものかどうか、ずっと迷っていた。性暴力の根絶を求めるフラワーデモ。私は男性で、記者でもある。女性が痛みを語る場に、そういう存在はなるべく少ない方がいいと思っていた

▼「国際女性デー」のきのうの夜、最後になると知って那覇市の県民広場に出掛けた。暗い。実行委員会の上野さやかさんは「この薄暗さもフラワーデモの良さです」と言った

▼マイクを持つ時も、前に出なくていい。手を挙げる人がいなければ、みんなで待つ。誰かが語り始めれば、ただ聞く。強い拍手も控えるような、そんな静かな会

▼呼び掛け人の一人、北原みのりさんのメッセージが、到達点を表していた。「被害者は語れなかったのではなく、社会に聞く力がなかった。私たちは聞く力をようやく身につけることができた」

▼会は女性たちが用意した。74歳の女性が中学2年生の時の被害を語った。「ずっと言いたかった。こういう会があってうれしい」。語ることを抑圧してきたのは男性中心の社会だった。別の女性は「恥ずかしいのは女性でなく男性だ」と言った

基地問題が沖縄ではなく本土の問題であるように、性暴力は被害者ではなく加害者の、圧倒的に男性の、問題である。なのに、女性が苦しみの中から声を上げるまで気づかないふりをしていた。今はただ、応えるのみ。(阿部岳)