震災関連死 防ぐ手だてに改善重ねて - 信濃毎日新聞(2020年3月3日)

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200303/KT200302ETI090009000.php
http://archive.today/2020.03.04-003951/https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200303/KT200302ETI090009000.php

災害発生時だけでなく、避難生活に移ってからも続いた困難の深刻さを物語る。
東日本大震災に伴う震災関連死の24%を障害者が占める―。共同通信のまとめで分かった。
大震災後も豪雨や地震、噴火、土砂災害が各地で相次ぐ。障害者や高齢者ら「災害弱者」に避難指示が届かず、支援からも取り残される事例が後を絶たない。
3・11から9年を機に、地域の備えを点検し直し、平時から改善を重ねていきたい。
震災関連死は避難生活で持病が悪化したり疲労がたまったりして亡くなった人たちを指す。岩手、宮城、福島3県の関連死は昨年9月末で3683人を数えた。原発事故で長期避難を強いられた福島県では、地震津波による直接死を上回っている。
障害者には環境激変の影響が特に大きいという。介助してきた家族や施設職員が震災の犠牲になった場合などは、心のケアが難しいとの現場の声が聞かれる。バリアフリーが整わない仮設住宅での生活も負担となった。
避難所で心ない言葉を浴びて半壊の自宅に帰った、車いすに幾日も座り続けた、迷惑になるからと発達障害の子と原発の避難区域内にある自宅に残った…。そんな事例も報告されている。
長野を含む都道府県で「災害派遣福祉チーム」が発足している。あらかじめ登録した社会福祉士介護福祉士らを災害時に避難所に派遣する仕組みだ。昨秋の台風19号災害では、他県のチームも長野県に駆けつけた。
関連死を防ぐ効果が高い半面、慢性的な人手不足にある。資格の有無にかかわらず、福祉分野のNPOスタッフにも協力を求めてはどうか。県境を越えた連携も一層深めてもらいたい。
福祉避難所の設置も進む。が、半数超の自治体が「住民が殺到する懸念」から存在を非公表にしてきた。これでは意味がない。積極的に周知し、住民に役割への理解を求めるべきだろう。
東日本大震災における障害者の死亡率は健常者の2倍に上った。国はその後、市町村に災害弱者名簿の作成を義務付け、関係機関への提供を促した。高齢者施設、障害者施設、学校などには避難計画の策定を課した。それでも災害が起きるたび、避難対策の不備や機能不全の問題が浮上する。
政府、自治体、住民それぞれの役割を整理し、認識を高める必要がある。訓練の機会を増やし、救える命を守りたい。