児童虐待の防止 安否確認の態勢強めたい - 琉球新報(2019年3月30日)

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全国で児童虐待の緊急安全確認を実施した結果、児童相談所が在宅指導している3万7806人のうち、計170人が親と引き離された。緊急安全確認は、千葉県野田市で小学4年栗原心愛(みあ)さんが死亡した事件を受けて行われ、厚生労働省文部科学省が調査結果を公表した。
確認を進めたことで、一時保護などの措置を取っていなかった児相の対応が一部見直された。当初の判断に甘さはなかったのだろうか。検証し今後に生かしてほしい。
見過ごせないのは、面会できず継続対応が必要な子どもが2626人いたことだ。2535人とは面会予定があるというが、35人は所在不明だった。虐待の被害に遭っているのなら、一刻も早く救い出さなければならない。
教育現場からも深刻な実態が浮かび上がった。全国の小中学校や教育委員会などが、欠席が続く児童生徒ら18万7462人の安否確認を実施したところ、県内の232人を含め1万2545人は虐待の可能性が否定できなかった。
一時保護された子どもの保護者らが学校や教育委員会に不当な要求をするケースも44件確認されている。保護の解除を求めて罵声を浴びせたり、学区外への転校を求める事例があった。
筋の通らない抗議や要求には屈せず、毅然(きぜん)とした態度で拒絶することが大切だ。そのためには警察の力を借りることも必要になる。
児相、学校、警察など関係機関が緊密に連携することで、スムーズに子どもの安全確認ができる態勢を構築することが急務だ。
栗原心愛さんが死亡した事件では児相の対応も批判された。だが、現在の体制で、増え続ける虐待事案にきめ細かく対処できるはずがない。児童福祉司の資質向上と大幅な増員は不可欠だ。
政府は、親権者による体罰禁止を盛り込んだ児童虐待防止法児童福祉法の改正案を衆院に提出し、今国会での成立を目指している。罰則規定はないが、法律で禁止することで、体罰の不当性を啓発する効果は期待できよう。
「しつけ」を名目とする虐待が後を絶たないのは、家庭での体罰を容認する意識が根強いことが背景にあると考えられる。民法に、親権者による懲戒権を定めた条文があるのもその表れだろう。
児童虐待防止法を改正して体罰を禁じても、民法の「懲戒権」が手付かずのままでは説得力を欠く。
政府は、懲戒権の在り方について、改正法施行後2年をめどに検討するというが、このような前時代的な規定は一刻も早く削除すべきである。
とはいえ、法律を変えれば虐待がなくなるというわけではない。加害の芽を根本から断つことが大切だ。
子どもが虐待されない健全な社会を築くにはどうすればいいのか。社会全体で考えなければならない課題だ。