森友学園問題 核心をうやむやにできぬ - 信濃毎日新聞(2020年2月20日)

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200220/KT200219ETI090005000.php
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大阪の学校法人「森友学園」に国有地が大幅に値引きして売却された問題が発覚して3年。疑惑の核心をうやむやにしたまま、学園側にだけ責任を負わせて幕を引くわけにはいかない。
前理事長と妻が詐欺などに問われた裁判で、大阪地裁が前理事長に懲役5年、妻に懲役3年、執行猶予5年の判決を言い渡した。前理事長については、起訴内容の全てで有罪と認定した。
小学校の開設をめぐり、国や府、市の補助金1億7千万円余をだまし取ったとして起訴されていた。それは問題の一面にすぎない。
核心は、建設用地として売却された国有地が、評価額の9億5千万円余からなぜ8億円以上も値引きされたのかだ。代金の分割払いを認めたことを含め、売却の経緯も異例ずくめだった。
小学校は、安倍晋三首相の妻の昭恵氏が一時、名誉校長に就いていた。政権への忖度(そんたく)が働き、行政の公正さが損なわれたのではないか。疑惑は消えていない。
もう一つは、公文書の取り扱いだ。財務省の決裁文書は改ざんされ、昭恵氏の名前や「本件の特殊性」といった文言が消された。交渉過程の記録は、契約から1年もたたずに廃棄されている。
国有地を不当に安く売却したとする背任や、行政文書を改ざんした虚偽公文書作成の疑いが持ち上がりながら、財務省の幹部、職員は誰も裁判で刑事責任を問われていない。大阪地検が起訴したのは前理事長夫妻だけだ。
佐川宣寿・元理財局長らを不起訴とした処分に対し、検察審査会は「不当」と議決したものの、地検が再び不起訴を決め、捜査は終結している。文書の改ざんについては、根幹部分が変更されたわけではないと結論づけたという。納得がいかない判断である。
政と官の関係のゆがみ、公文書の恣意(しい)的な扱いは、加計学園獣医学部新設や、首相が主催する「桜を見る会」の問題にも通じる。政権に近い人物に便宜が図られ、行政が私物化されれば、民主主義は成り立たなくなる。
公文書は、行政施策や政府の意思決定の過程を検証するのに欠かせない手がかりだ。都合が悪いからと改ざんし、廃棄することが許されるはずもない。
政治、行政の根幹に関わる問題として、徹底した真相究明の努力を続ける必要がある。刑事責任を問うのが難しいのならなおさら、政府を監視する国会が本来の役目を果たさなければならない。与党の責任こそが重い。