懸念残しカジノ法成立 制度運用331項目、政省令任せ - 東京新聞(2018年7月21日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201807/CK2018072102000162.html
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カジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備法は二十日の参院本会議で、自民、公明の与党、日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。ギャンブル依存症が拡大するとして野党が反対する中、自公が採決を押し切った。立憲民主党などは内閣不信任決議案を提出したが衆院本会議で否決された。通常国会は二十二日の会期末を前に事実上閉幕した。
法律はカジノを刑法の賭博罪の適用対象から外し、解禁することが柱。IRは全国三カ所を上限に整備し、日本人から一回入場料六千円を徴収する。
カジノ事業者には利用客への金銭貸し付け業務を認める。二〇二〇年代半ばにも第一弾が開業する見通しだ。
競馬などの公営ギャンブルとは別に、民間企業の賭博営業を合法化するのは初めて。カジノ営業を免許制としており、政府は今後、事業者の管理監督や、法令違反があった際の免許取り消しといった行政処分を担う「カジノ管理委員会」を新設する。
カジノを巡る詳細は今後、三百三十一項目の政令や省令、規則で定める。法律と違い政令や省令は、国会審議なしに政府の判断で改正することも可能なため、野党は「政府が白紙委任を取り付けた」と反発する。
政省令や規則で決まる重要な内容は、IR全体に占めるカジノ面積の割合上限だ。巨大カジノが建設される懸念に配慮し、政府は国会審議で、国際会議場やホテルなどが複合的に設置されるIRでカジノを「IRの延べ床面積の3%以下」にすると説明した。だが、国会審議なしに政府が変更できる。
バカラなど、どのようなカジノゲームを認めるかも対象となる。
カジノ事業者が貸金業を担い、賭け金が不足した客に施設内で融資できる「特定金融業務」も可能にするが、制度設計は「カジノ管理委員会」に委ねられる。融資限度額などはカジノ事業者が個別に設定する見通しだ。
不信任案は立民、国民民主、共産、自由、社民の野党五党と衆院会派「無所属の会」の党首らの会談を経て、共同提出された。一連の不祥事に触れ「安倍内閣は議会制民主主義の根幹を破壊した。前代未聞の蛮行で、断じて許されるものではない」とした。与党や維新の反対多数で否決された。
通常国会は一月二十二日に召集された。対決法案となった働き方法や参院六増法は与党が野党の反対を押し切って成立させた。会期は七月二十二日まで延長された。

◆森友・加計、解明なく実質閉会
森友学園」への国有地売却などに関する財務省の決裁文書改ざんを巡り、自民党は二十日、衆参両院の予算委員会理事会で、野党が求める佐川宣寿(のぶひさ)・前国税庁長官を議院証言法違反(偽証)で告発することについて「慎重であるべきだ」との見解を示し、事実上、拒否した。森友問題では、なぜ改ざんが行われたのか、安倍晋三首相の妻昭恵氏の関与や官僚の忖度(そんたく)はあったのかなど、多くの疑問が残されている。加計(かけ)問題を巡る疑惑も解明されないまま、今国会は幕を閉じる。
野党は三月に証人喚問した佐川氏の証言と財務省が六月に公表した決裁文書改ざんの調査結果を比較。衆院で五カ所、参院で四カ所の偽証があったと指摘する。佐川氏は国有地売却に関して「安倍晋三首相や昭恵首相夫人の話はなかった」と国会で説明したが、財務省の調査結果と異なると認定。与党に告発への協力を呼びかけていた。
理事会の出席者によると、与党は「佐川氏は記憶に反する証言はしていない」と主張。市民からの告発を受け、虚偽公文書作成容疑などで捜査していた大阪地検が不起訴としたことも踏まえ「収賄などの重大事件でない限り、告発は慎重に扱うべきだ」などと、消極的な姿勢に終始した。告発には委員会で出席議員の三分の二以上の賛成が必要なため、告発が見送られることが確実になった。
衆院予算委の野党筆頭理事で、立憲民主党逢坂誠二氏は本紙の取材に「与党の言い分では、『記憶の限り』という枕ことばをつければ、国会でいくらでもうそを言って良いことになってしまう。真実を明らかにするため、どう対応するか考えるべきだ」と批判した。 (生島章弘)