首相のやじ 本当に反省したのか - 東京新聞(2020年2月18日)

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野党議員に「意味のない質問だよ」とやじを飛ばした安倍晋三首相がきのう謝罪した。しかし、首相はこれまでも謝罪しては再びやじを飛ばすことを繰り返してきた。本当に反省しているのか。
きのう開かれた衆院予算委員会の冒頭、首相は「(立憲民主党の)辻元(清美)委員に対し、質疑終了後、不規則な発言をしたことをおわびする。今後、閣僚席からの不規則発言は厳に慎むよう、首相として身を処していく」と謝罪した。
首相がやじを飛ばしたのは十二日の同委員会。
辻元氏が、和泉洋人首相補佐官厚生労働省の大坪寛子官房審議官が海外出張先で内部でつながる隣同士の部屋に宿泊していた問題をただし、「鯛(たい)は頭から腐る。上層部が腐敗していると残りもすぐに腐る。首相が桜とか加計とか森友とか、疑惑まみれと言われている。ここまできたら頭を代えるしかない」と述べた直後だった。
首相はやじの趣旨について「罵詈(ばり)雑言の連続で私に反論の機会が与えられなかった。ここは質疑の場だ。これでは無意味じゃないかと申し上げた」と釈明したが、到底認められるわけがない。
そもそも国会は政府による反論や宣伝の場ではない。国会は行政監視や国政の調査機能を担っており、相手が野党でも、政府は質問に誠実に答える義務を負う。
首相のやじは国会を冒涜(ぼうとく)する暴言だ。野党質問の背景にある国民の疑念を顧みないのは長期政権ゆえの傲慢(ごうまん)である。謝罪は当然だ。
問題は、首相のやじが今回、初めてではないことだ。
首相は二〇一五年五月、衆院特別委員会で同じ辻元氏に「早く質問しろよ」と自席からやじを飛ばし、「言葉が過ぎたとすれば、おわび申し上げたい」と謝罪した。
そのときも立法府への冒涜だと批判された。謝罪しながら同様のことを繰り返すのは、心から反省していないからではないのか。
共同通信社の最新全国電世論調査では、安倍内閣の支持率は41・0%と、一月の前回調査から8・3ポイントも下落した。
内閣支持率急落の背景にはさまざまな要因があろうが、国民が政権・国会運営の強引さを感じ取っていることも大きな理由だろう。「桜を見る会」では、首相が「十分に説明しているとは思わない」との答えは84・5%と依然高い。
首相は野党の質問にやじを飛ばしている場合ではない。誠実に答えることこそが自らの役割だと、まずは認識を改めるべきである。