首相の答弁 法の抜け道の正当化だ - 信濃毎日新聞(2020年2月7日)

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200207/KT200206ETI090006000.php
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「政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため(略)、政治活動の公明と公正を確保し民主政治の健全な発展に寄与する」
これが政治資金規正法の第1条に定められた「目的」である。
1948年に制定された後、田中金脈問題やリクルート事件などの政治資金問題が生じるたびに改正され、現在の形がつくられた。
不透明な政治資金は政治をゆがめ、特定の層に利益を生みかねない。政治資金収支報告書への記載などの義務は、過去の教訓から学んだ政治の工夫だ。
安倍晋三首相は、規正法の「抜け道」を国会で主張し、自らの行為を正当化している。「桜を見る会」を巡る答弁である。前夜に開かれた夕食会費の収支が、収支報告書に記載されていない問題だ。
首相の答弁はこうである。
夕食会の主催は安倍事務所だが、契約は一人一人の参加者とホテルだ。事務所はホテルと参加者を仲介しただけである、と。
事務所が参加者から集めた会費はその場でホテルに渡し、ホテルが領収書を発行した。事務所に収支は発生しておらず、収支報告書に記載する義務はない、と。
答弁は揺れている。1月下旬の予算委では「キャンセルが発生しても問題ないという契約を(事務所とホテルが)している」と答弁している。5日には「契約」ではなく「事務所はホテルと合意し、仲介しただけ」と訂正した。
契約主体が事務所になれば、収支報告書への記載義務が生じる可能性がある。そのために訂正したのではないのか。
この主張が通るなら、政治的な会合で事務所がホテルと交渉して低価格にして、参加者に利益があっても資金の流れは闇の中だ。
予算委では「巧妙に考えられた脱法の方法」と指摘された。「他の議員が踏襲しても問題ないのか」とただされ、安倍首相は「同じ形式なら問題ない」と述べた。首相が国会議員に規正法の形骸化を推奨しているのと同じだ。法の趣旨をないがしろにしている。
もし主張通りなら、なぜ法の網を抜け、収支報告書に記載しなくても済む夕食会にしたのか。その理由を明らかにするべきだ。
首相は、主張を裏付ける領収書や明細書などを提出していない。虚偽の答弁なら規正法違反の疑いがある。規正法第2条は基本理念として「政治資金の収支の状況を明らかにして、判断は国民にゆだねる」とある。首相の弁明は国民をも軽んじているのではないか。

 


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