衆院予算委論戦 「桜」疑惑 脇には置けぬ - 北海道新聞(2020年2月4日)

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/389695
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衆院予算委員会はきのう、新年度予算案の実質審議に入った。
初日は与野党とも新型コロナウイルスによる肺炎の感染防止対策に多くの質問時間を割いた。
感染拡大を食い止められるかどうかの重要な局面にあり、国会も議論を重ねるべきなのは当然だ。
だからといって、政権の疑惑を脇に置くわけにはいかない。
桜を見る会」の私物化疑惑を巡り安倍晋三首相は先週、地元事務所の参加募集に関し「幅広く募っているという認識で、募集しているという認識はなかった」などと苦し紛れの答弁を行った。
問題から逃げ続ける首相の姿勢が、真相究明を遠ざけている。
昨年の桜を見る会では、安倍事務所から地元支持者への案内文で申込期限が2月20日とされ、各省庁からの推薦枠(2月8日)、政治家推薦枠(同12日)より遅い設定だったことが判明した。
3段階の締め切りは、政治家枠の中でも首相支持者だけが特別扱いされていたことを意味する。
事務所が政府の招待状発送前に参加決定を通知していた事実と併せ、推薦した支持者が政府の審査を経ずそのまま招待されていた私物化の疑いがより濃くなった。
桜を見る会前日の前夜祭を政治資金収支報告書に記載しなかった問題で、野党は先週に続ききのうの審議でも、ホテルが参加者に発行したとする領収書の写しを示すよう求め、首相は拒否した。
「契約当事者は(ホテルと)個々の参加者」で、首相や事務所は当事者ではないとの認識だ。
前夜祭の主催者は後援会で、ホテルとの交渉は安倍事務所が行った。なのに、契約は個々人―。
こんな不自然な論理がまかり通れば、政治家が開く後援会の親睦会などは全て収支を記載しなくていいことになる。政治とカネの透明性確保をうたう政治資金規正法の規範に著しく反する。
厳格な法の支配の下に権力を行使する一国の首相が、脱法行為を働いて恥じるところがない。そんな印象を持たれても仕方がない。
自民党内からは先週、「桜」に集中した野党の質問を「季節外れ」などとやゆする声が出た。
だが政権のずさんな公文書管理に対しては、公明党も予算委で「大変に憤まんやるかたない」などと強い調子で批判している。
自民党から厳しく問題視する質問は皆無に近い。立法府の一員として行政監視の役割を果たそうとせず、逆風をやり過ごそうとしている姿勢こそ問われよう。