(政界地獄耳) 記者クラブ制度に残る護送船団の厚い壁 - 日刊スポーツ(2020年2月4日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202002040000052.html
http://archive.today/2020.02.04-052552/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202002040000052.html

★「護送船団」という言葉が政治面や経済面をにぎわしていた時代があった。元来は軍事用語で船団の中の遅い船に合わせて全体がまとまって“護送”し、弱い船を守りながら進んでいく戦法だ。それを多くの業界が戦後取り入れ、落後者が出ないように官庁が監督し、まとめ上げ業界を発展させていく手法に昇華させた。その最たるものが金融界でバブル期後の金融ビッグバンまでつぶれる会社も皆無。しかし競争力がつき始めた後も業界全体が横並び、抜け駆けなしの保護政策の悪例となり、官民癒着の代表格として扱われ、銀行再編、財務省金融庁への分離(今は大臣が同じなので形骸化)となった。

★その護送船団方式の最後のとりでが報道機関と記者クラブ制度といえる。新聞の軽減税率で足並みをそろえ、記者クラブでは官邸や霞が関の官庁の中に部屋を構え、行政を監視していることになっているが、役所の発表ものを記事化したりクラブ員だけの特権がいくつか与えられている。テレビが出現すればクラブに加盟させるか否か相談し、ネットが生まれればその都度一部を解禁する護送船団の方式をとる。これは政治に限らず全国の県政、県警、スポーツにも同様のクラブがある。

★内閣記者会で東京新聞の女性記者が「自分が官房長官会見で指されない」と怒っている。それにはクラブと官邸の官房長官番が加担しているとの見方もある。前日産会長カルロス・ゴーンレバノンで会見した時、日本の大手メディアは締め出された。締め出された経験がないから怒るが、それを国内でやっていることに思いが至らない。記者会見は誰もが参加できていい。だが特ダネは会見ではぶつけないだろう。会見に出なくとも取材はできる。女性記者の「指されない」は護送船団の中の話だ。先月24日、朝日新聞の声欄に「首相と会食した解説委員にどんな感触を得たのか知りたい」と掲載された。2日付「日曜に想う」では解説委員は正面から回答しなかった。護送船団の壁は厚い。(K)※敬称略