首相施政方針 疑惑解明の意欲見えぬ - 東京新聞(2020年1月21日)

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通常国会がきのう召集された。安倍晋三首相は施政方針演説で、経済政策や社会保障改革に取り組む姿勢を強調したが、政権に向けられた疑惑の解明に努めようという意欲は全く見えてこない。
今年の通常国会は夏に東京都知事選、東京五輪パラリンピックを控え会期延長が難しい。政府は提出法案を最少の五十二本に絞って予算案や年金制度改革など関連法案の早期成立を期す、という。
虚偽報告や情報隠蔽(いんぺい)は論外だが、政府が国民の代表で構成する国会と誠実に向き合わなければ、審議が公正に行われるはずがない。まず問わねばならないのは安倍政権の政治姿勢である。
二〇一二年十二月に政権復帰した安倍首相は、第一次内閣を含めた通算在職日数で歴代最長記録を更新し続け、長期政権ゆえのおごりや緩みも顕著となっている。
首相が地元支援者らを多数招待して「私物化」と批判を浴びた上に、招待者名簿の違法管理を続けた「桜を見る会」問題、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)に絡み、現職国会議員が逮捕された汚職事件は、その典型だろう。
しかし、首相は施政方針演説の中で、桜を見る会やIRの問題には全く言及せず、疑惑解明に向けた決意や意欲は伝わってこない。
昨年十月、公職選挙法に抵触する可能性がある「政治とカネ」の問題で閣僚が相次いで辞任したことについても触れずじまいだ。
共同通信社による今月中旬の世論調査では、首相が桜を見る会の疑惑を「十分説明していると思わない」とする回答は86・4%に達し、IR整備を「見直すべきだ」と答えた人も70・6%に上る。
首相はこうした国民の厳しい声を正面から受け止めているのか。
桜を見る会は中止となり、二〇年度は予算を計上していない、捜査中の事件のコメントは差し控える、というのが政府側の言い分なのだろうが、国民の理解が得られるとは到底思えない。
自衛隊の中東派遣について「情報収集態勢を整え、日本関係船舶の安全を確保する」と述べたが、そもそも国会の審議や議決を経ず、政府のみの判断で自衛隊を海外に派遣することは妥当か。
政権の長期化に伴い、国会を軽んじる姿勢も目立つ。三権分立の危機である。国会と誠実に向き合い、真実のみを述べ、情報を隠さず、野党の指摘にも真摯(しんし)に答えるのか。議会制民主主義の基盤を成す政権の政治姿勢こそ、今年も問われ続けなければならない。