「疑惑」国会幕開け 説明は国民代表の責務だ - 琉球新報(2020年1月22日)

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言論の府で口を閉ざすとは任務の放棄も甚だしい。まずは、かけられた疑惑に対する説明を尽くすことが国民の代表である国会議員の責務だと肝に銘じるべきだ。
通常国会が開会した。安倍晋三首相主催の「桜を見る会」を巡る問題、元閣僚らの公選法違反疑惑、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業を巡る汚職事件が焦点だ。
にもかかわらず、問題が指摘され、「疑惑」が浮上した議員は木で鼻をくくったような説明しかしなかった。
昨年10月に法相を辞任した自民党河井克行衆院議員は「捜査中で支障を来さないよう発言を慎む」と説明を避けた。妻の案里参院議員と共に昨年の参院選で車上運動員に法定上限を超える報酬を支払っていた疑惑がかけられている。案里氏も「捜査の区切りがついたところで説明したい」と語るだけだった。
昨年10月に経済産業相を辞任した自民党菅原一秀衆院議員は、秘書が選挙区の有権者に香典を手渡した疑いがある。公選法違反容疑で東京地検に告発された。「当局から要請があれば誠意を持って協力する」と繰り返した。
いずれも疑いが持たれているのは自らの政治活動に関わる違法な行為だ。なぜ説明しないのか。
国民の代表であることの自覚を忘れてはならない。国民へ訴え、語り掛けるのは何も選挙の時だけではない。疑惑を持たれている時こそ、誠実な説明が大切になる。
疑惑について発言したからといって、捜査に影響を及ぼすことなどあり得ない。身に覚えのない疑いをかけられているのなら、堂々と主張すればいい。
IR汚職事件で、贈賄容疑で逮捕された中国企業の元顧問が「現金を渡した」と供述した衆院議員も登院した。
県関係議員の一人が下地幹郎衆院議員だ。100万円の受領を認め、日本維新の会を除名されたが、下地氏は「しゃべらんよ」と述べた。
一方で本紙の首相施政方針演説に対するコメントでは「新聞でのIR疑惑とは無関係だと国会で証明する」と寄せた。証明の機会を早期に設けるよう望みたい。
宮崎政久法務政務官は「金銭の授受は一切ない。不正もない」と答えた。しかし中国企業の元顧問との関係性については釈然としない部分もある。国会審議や記者会見を通じて丁寧な説明が求められる。
説明責任がないがしろにされるのは首相の対応にも原因がある。臨時国会で「桜を見る会」に関する集中審議を避け続けた。会期延長にも応じなかった。20日の施政方針でも一切言及していない。
国民に説明しない、あしき前例をつくっている。
まずは首相自身が反省して態度を改めることだ。「桜を見る会」を巡る数々の疑惑に対し、国会審議の場で誠意をもって質問に答え、模範を示すべきだろう。