桜を見る会 国民を欺く公文書管理 - 朝日新聞(2020年1月15日)

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ずさんな公文書管理を許せば、国民による政治のチェックは難しくなり、民主主義の土台を掘り崩してしまう。徹底した経緯の解明と、責任の所在を明らかにすることが不可欠だ。
首相主催の「桜を見る会」の招待者名簿の扱いについて、菅官房長官が公文書管理法と内閣府の文書管理規則に違反していたことを認めた。政府が繰り返してきた「ルールに基づいて適切に保存・廃棄している」との説明が根底から覆る事態と言わざるを得ない。
公文書管理法は、保存期間が1年以上の公文書について、公開される「管理簿」に名称や保存期間などを記載するよう義務づけている。ところが、招待者名簿は保存期間が1年とされていた13~17年度、全く記載がなかったうえ、廃棄の前に必要な首相の同意を得ず、政府のガイドラインが定める廃棄の記録も残していなかった。
二重三重のルール無視が、5年も続いていたことに驚く。その理由について、菅氏は先週、「事務的な記載漏れ」と述べていたが、きのうになって、民主党政権時代の11、12年度の取り扱いが「前例」となり、「漫然と13年度以降も引き継がれてきた」と説明した。会自体が中止となった11、12年度の処理を「前例」にしたというのか。にわかには納得できない。
名簿の保存期間は18年度から、管理簿への記載義務がない1年未満に変更され、会の終了後、直ちに廃棄されるようになった。翌年の準備のために保管しておいてしかるべきものを、大量の個人情報を持ち続けるリスクを避けたという政府の言い分をうのみにはできない。
この会の招待者は、第2次安倍政権発足以降、年々膨らみ続け、首相の後援会関係者や妻の昭恵氏が推薦した知人らが大勢含まれていた。こうした実態を公にしたくないという思惑が、公文書管理のあり方に影響してはいなかったか。
この政権下では、森友問題での財務省の公文書改ざんや自衛隊の日報隠しなど、国民の「知る権利」に背く不祥事が後を絶たない。公務員のルール逸脱をこれ以上、繰り返さぬために、安倍首相や菅氏は先頭にたって、政府全体の公文書管理を検証し、実効性のある再発防止策を講じる必要がある。
もちろん、その大前提は、首相自身がこの問題できちんと説明責任を果たすことにある。20日から始まる通常国会では、議論すべき内外の諸課題が山積している。実のある政策論争を実現するためには、首相が昨年の臨時国会でみせたような逃げの姿勢を改め、野党の疑問に正面から答えねばならない。