「桜」の名簿 違法廃棄の背景に迫れ - 東京新聞(2020年1月15日)

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桜を見る会」の招待客名簿が公文書管理法の規定に反し、廃棄されていた。「担当者の認識不足」では済まない。国民の「知る権利」をも裏切る行為であり、責任追及と真相究明が必要だ。
「さまざまな批判があることは十分に承知している」「(招待客名簿については)適正に廃棄をしている」-昨年の臨時国会安倍晋三首相は「桜を見る会」の問題について、そのように語っていた。一方、今月二十日からの通常国会を見据えて、野党側は追及本部をつくり、さらに説明を求めていく方針だった。
そんな矢先に菅義偉官房長官は記者会見で、従来とは正反対の見解を示した。二〇一三~一七年度の招待客名簿を行政文書の管理簿に記載していなかったことを認めたのだ。「公文書管理法の関連規定、内閣府の文書管理規則に違反する対応だった」と。
違法廃棄だったわけだ。さらに名簿廃棄の前に首相同意がなかった。これも違法である。
公文書の取り扱いとして言語道断である。保存期間が一年以上ならばファイルにまとめ、名称や保存期間、終了後の措置を管理簿に記載し、インターネット上に公表せねばならない。むろん国民が閲覧できるための規定である。
管理簿に記載しないのは、国民の目をごまかすためとしか思えない。内閣府は「詳細は不明」としか回答しないが、事は重大である。第三者による調査を実施し、国民に説明を尽くさねばならない。責任の所在を明確にし、その背景まであぶり出したい。
菅氏は「担当者の意識が低かった」と言うが、その程度の認識なのか。文書管理がずさんなのではなく、廃棄を意図的に行うためだったせいではないのか。
何しろ一七年末に行政文書管理のガイドライン(指針)を改定した。「桜を見る会」の名簿も保存期間が「一年未満」に短縮され、一八年度から管理簿への記載義務がなくなっている。
つまり、「違法な名簿廃棄」から「合法な名簿廃棄」へと変わっただけではないのか。共同通信世論調査では、この問題に首相が「十分説明しているとは思わない」とする回答が86・4%にも上っている。
首相の地元有権者らが多数参加し、開会前に飲み食いしたなどと報じられている。「反社」の人も…。何らかの法令違反に当たらないか、この疑惑解明こそ本丸である。それを国民は望んでいよう。