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国費を使った公的行事を私物化しているように映る。
毎年春に東京・新宿御苑で開催されている首相主催の「桜を見る会」に安倍晋三首相の後援会関係者が多数招待されていた疑惑が浮上した。
桜を見る会と東京観光を組み合わせたツアーが企画され、首相の地元事務所を介して参加者を募っていたことが、これまでに分かっている。
2017年に開催された「桜を見る会」に関する案内文は、観光コースとの組み合わせや航空券手配などの希望をアンケートで確認する内容で、「内閣府での取りまとめになりますので、締切後の追加申込はできません」などと記載されていた。
首相の事務所が推薦すれば招待状が届く仕組みになっていたらしい。事務所サイドが招待者の選定に深く関与していたことは明らかだ。
後援会のメンバーに特別な便宜を図り、公費で催す行事に招待すること自体、公私混同であり、公正・公平な行政の在り方とは程遠い。
公職選挙法は政治家が選挙区内の人に寄付をすることを禁じる。桜を見る会で多数の後援者に飲食物を無償で提供する行為は、場合によっては法に触れる可能性もあるだろう。少なくとも、道義的な責任は免れない。
開催要領によると、招待の範囲は、各国大公使、国務大臣、国会議員、都道府県知事、議長らに加え、「その他各界の代表者等」とされている。後援会関係者は「その他各界の代表者等」に含まれるとみられる。
招待者は各省庁の意見等を踏まえ、最終的に内閣官房・内閣府で取りまとめる。例年、スポーツ選手、芸能人、報道関係者も招かれている。
14年に約1万3700人だった参加者は、今年は約1万8200人に達した。これに伴い、14年に約3千万円だった支出が今年は約5500万円に膨らんだ。
批判の高まりを受け、来年の「桜を見る会」は中止に追い込まれた。菅義偉官房長官は「招待基準の明確化やプロセスの透明化を検討し、予算や招待人数を含めて全般的に見直す」と理由を説明した。事実上、非を認めたに等しい。
もともと、招待する際のはっきりした基準などなく、首相サイドの恣意(しい)的な判断に委ねられていたのではないか。そうでなければツアーなど企画できるはずがない。桜を見る会は、後援会関係者へのサービスの一つとして利用されていたのだろう。
招待者名簿などの資料は会の終了後、速やかに廃棄する取り扱いになっていて、今年の資料も既に破棄されているという。やましいところがあるからすぐに処分したのではないか。不信感を増幅させる政府の対応だ。
招待者が大幅に増えたのはなぜか。後援会関係者は毎年、何人が参加していたのか。さまざまな疑問に対し、首相、政府は明確に説明すべきだ。