「勝利」の民主主義、危機 ベルリンの壁崩壊30年 - 東京新聞(2019年11月10日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201911/CK2019111002000145.html
http://web.archive.org/web/20191110001212/https://mainichi.jp/articles/20191110/ddm/005/070/041000c

人権意識が問われる課題だ。
出入国在留管理庁の施設に長期収容される外国人が急増している。3年半収容されたナイジェリア人男性がハンガーストライキを行い、6月に餓死してクローズアップされた。
男性は40代。窃盗罪などで服役後に国外退去を命じられ、長崎県の施設に収容された。離婚した日本人女性との間に子どもがいて、帰国を拒み、仮放免を求めていた。
在留資格がないなどとして退去強制令書を出された人は入管庁の施設に収容される。期限の定めはない。
今年6月末の収容者1253人のうち、6カ月以上の収容は54%の679人に上った。2年前、6カ月以上の収容者の割合は30%だった。現在、長い人は収容が7年に及ぶ。抗議のハンストは各地で起きている。
長期化について入管庁は、収容者の7割が送還を拒否しているためと説明する。一方で2016年以降、仮放免者は減っており、条件を厳格化した運用が理由との指摘もある。
入管庁は、送還拒否者の4割は入管法違反以外で有罪判決を受けており、仮放免を認めるべきでないと主張する。難民認定の申請中は送還されないため、制度を乱用した帰国逃れが一定数あるとの見解も示す。
しかし、退去命令を受けた人の大半は出国する。送還を拒むのは帰国すると危険があったり、日本でできた家族と離れたりするからだろう。
身体の自由は基本的人権の大きな要素である。仮放免は、もっと柔軟に運用すべきではないか。仮放免中の犯罪や逃亡は、就労を禁止されることが一因との見方もある。
さらに、退去強制令書に伴う収容に、期限を設ける必要がある。収容はあくまで送還の準備が目的だ。海外では欧州連合が原則6カ月とするなど期限を定めている例が多い。
退去や収容の手続きは行政処分として入管庁や法相が行っている。身体の自由を奪う判断であり、裁判所が関与する仕組みを検討すべきだ。
日本の入管制度は度々、国連の機関から懸念を示されてきた。入管庁は有識者会議を設け、年度内に長期収容の改善策の提言を受ける。
働き手不足で、日本は外国人の受け入れを拡大した。長期収容への対応は、日本が外国人にどう向き合っていくのかを示す指標でもある。