【政界地獄耳】映画「牛久」に見る入管の実態 - 日刊スポーツ(2022年2月1日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202202010000177.html

★「牛久」をご存じだろうか。もちろん茨城県牛久市であるのだが、今回はその牛久にある、全国に17カ所ある東日本入国管理センターを描いたドキュメンタリー映画のタイトルだ。そこに収容された人々の証言から日本の入管収容所の実態が描かれる。東京では今月26日から公開される。監督はアメリカ出身のトーマス・アッシュ。日本の法律は在留資格がない人や難民、更新が認められず国外退去を命じられた外国人を「不法滞在者」として強制的に収容している。人権無視などの実態が初めてさらされたということになる。昨年も「東京クルド」というクルド人難民を描くドキュメンタリーがあったが、この映画は入管の収容実態が明らかになる。

★映画は施設の厳しい規制の中、収容されている内部の状況を当事者たちの了解を得て、面会室での隠し撮りも含めてこれが入管の実態かと思わせる目を覆うシーンもある。医療を受けることもままならず、日本語ができても難民申請しても日本人と結婚していても、犯罪者でないのに彼らは非人間的に扱われる。日本に期待し信頼し、日本が好きで、だが彼らから語られる胸を突く言葉にこれが日本の国際化、ダイバーシティ、共生社会の実態なのかと思わざるを得ない。

★収容者は入管にとって模範的な態度をとり条件を満たすと仮放免を受け施設の外に数週間でることができるが、指定の県外に移動してはいけない、住民票がないから生活保護、健康保険が受けられず医者にかかれば10割負担になる。だが働いてはいけないから収入はない。その繰り返しだ。映画後半、国会でこの問題が予算委員会の議題になるシーンがあるが、政府はまじめに対応しない。昨年12月1日現在、牛久には18人が収容されているが、20年以降仮放免が急増したのは皮肉にも新型コロナのクラスター防止のためだ。(K)※敬称略

 

 


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