[大弦小弦]できること、できないこと - 沖縄タイムス(2019年10月1日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/477994
http://web.archive.org/web/20191001065816/https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/477994

「新しい世界に飛び込んで自分を試したかったの。やってみなきゃ分かんないでしょ」。生まれつき骨が弱い障がいがあり、電動車いすで生活するコラムニスト伊是名夏子さん(37)。高校2年時の言葉が19年前の本紙に載っている

▼中学まで特別支援学校に通ったが、多くの友達をつくりたいと首里高に進学した。階段での移動は友達の助けを借りながら、人懐っこい笑顔で高校生活を謳歌(おうか)する「なっちゃん」は鮮烈だった

▼今では6歳と4歳児の母。神奈川県で10人のヘルパーやボランティアらと子育てに奮闘する。著書「ママは身長100cm」にはハイリスクの妊娠・出産を信頼する医師らと乗り越えた経験、母としての喜びや苦労をつづる

▼3姉妹の夏子さんは、歩ける2人の姉をうらやましいと思ったことがないという。障がいの有無にかかわらず、できること、できないことは一人一人違う。だからこそ「一人でできること」よりも「人と助け合うこと」を大切にする

▼先日、那覇市内であった出版イベントは立ち見が出るほどの盛況だった。周囲の人とつながりながら、やってみたいことに挑戦する姿に感服する

▼「自分と違う立場や考えの人ともっとつながりたい」と夏子さん。違いは面白く、違うから理解もできる。高校時代と変わらない真っすぐな瞳に力をもらった。(大門雅子)