https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/474227
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10月1日の幼児教育・保育無償化まで10日を切った。日本の保育制度の大きな変革だが、制度を支える保育士の待遇の問題が残されたままのスタートとなることに、危機感を覚える。
〈沖縄の保育士のリアルな給料 自分は保育経験トータル7年目で(手取り)12万6千354円。生活できません〉
県内の認可保育園で働く女性保育士は、総支給額17万1500円の給与明細とともにツイッターでそう発信した。
保育士の賃金の低さはかねて問題視されてきた。
2018年度の賃金構造基本統計調査によると、県内の保育士の月給は20万8千円。全国平均月給より3万1300円低く、県内全産業の平均を5万7300円下回る。
手取りとなるとさらに減り、保育士がツイッターで訴えた「生活できない」はリアルな叫びといっていい。
保育士の有効求人倍率は県平均の3倍を超え、仕事はあるが、なり手がいないのが現状だ。
県内には保育士の資格を持つ人が2万人以上いるが、およそ半分が、保育士として働いていない「潜在保育士」となっている。
子どもの命を預かり、成長を促す保育士。責任が重く、専門性が高い仕事に、賃金が見合っていないと感じる人が多いということだろう。
保育士自身が日々の生活に不安を抱えていては、丁寧に子どもたちと関わることもままならない。■ ■
なぜ保育士の賃金は低いのか。
認可保育園のほとんどを占める私立保育園は、地域や施設規模などを基に国が定め、支給する「公定価格」が運営費の原資になる。国はこれまで増額してきたがまだ低い。
各園は公定価格に基づいた委託費を人件費や管理費、事業費に充てるが配分はその園の裁量に任されており、園の状況によって給料が異なる。
保育士の平均就業年数に対して処遇改善費が支給されるが、平均10年以上に対する12%で頭打ちのため、経験の長い保育士がいても、園側は昇給させにくい。
国は、例えば0歳児3人につき保育士1人などの配置基準を定める。より丁寧な保育をしようと基準以上の保育士を配置すると、1人当たりの人件費が少なくなる。
公定価格は、公務員の給与水準を基に八つに地域区分されるが、沖縄は最低水準地域で、最高水準地域に比べ20%も公定価格が低く設定されている。しかも、沖縄の保育士の給与は、同じ地域区分の青森より3万円ほど低いという。
沖縄の賃金が際立って低い原因は何か。県はしっかり調査し対策を取る必要がある。■ ■
ことし4月時点で、県内の認可保育園142園で314人の保育士が不足している。待機児童数は全国で2番目に多い1702人。
保育士がいなければ、ハコがあっても子どもを預かれない。保育士不足は待機児童問題に直結している。
無償化で保育ニーズはさらに高まる。子どもたちのため保育士の待遇改善が急務だ。