https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/471765
http://web.archive.org/web/20190917000334/https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/471765
ショッキングな調査結果である。
2018年に薬物依存などで全国の精神科で治療を受けた10代患者の4割以上が、せき止め薬などの市販薬を乱用していたことが厚生労働省研究班の実態調査でわかった。
14年の調査では、「危険ドラッグ」が5割近くを占めていたが、取り締まりが強化されたため今回は1人もいなかった。依存する薬物が危険ドラッグから、安価で手軽に入手できる市販薬にシフトしていることがうかがえる。
せき止め薬などには依存症の原因となる成分が含まれ、依存性が高いといわれる。
背景には、インターネットで「多幸感が得られる」といった情報が出回っている現状があるようだ。
それに加え、薬局やドラッグストアにおける不適切な販売が拍車を掛けている。
せき止め薬など乱用の恐れのある市販薬は1瓶までと制限されているが、厚労省の調べでは、18年度に薬局やドラッグストアの48・0%が2瓶以上でも医薬品医療機器法で義務付けられた「使用目的の確認」などをしていない。若者へも本人確認などをせず薬局の46・6%、ドラッグストアの48・1%が販売。ネット販売も解禁され、規制は骨抜きだ。厚労省は今月12日、監視と指導を強化するよう都道府県に通知した。
市販薬の乱用で治療を受ける若者が高い割合でいることは憂慮すべき事態である。現状は店をはしごすれば大量に入手することが可能で、実効性のある対策が必要だ。■ ■
市販薬を乱用するケースは「消えたい」「死にたい」などと思う若者が意欲を一時的に高めるために使うことが多いという。研究班の責任者を務めた国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦薬物依存研究部長は、親がアルコール依存症や育児放棄などで、周囲に相談できずにいる若者も目立つという。
覚せい剤取締法違反罪に問われ有罪判決を受けた元プロ野球選手の清原和博さんが今年3月、厚労省の依存症への理解を深めるイベントに登場し、松本氏と対談した。
清原さんは「ほとんど苦しみの日々だったが、近くにいる人の理解があれば、今自分が苦しいんだと、つらいんだと言える環境があることが一番大きい」と周囲の支援の大切さを訴えた。
治療と同時に、同じ悩みを抱える若者同士が語り合い、仲間づくりにつながるような支援策が重要だ。■ ■
市販薬とは別に、10代の乱用者の薬物の2割以上が大麻であることが気掛かりだ。14年調査と比べ急増している。
大麻は大麻取締法で禁止された違法薬物である。脳に影響を及ぼし、認知機能の低下、妄想や幻覚などを引き起こすこともある。
県内で今年に入ってから、高校生を含む少年少女ら17人が逮捕・書類送検された事件は記憶に新しい。「体に悪影響はない」と誤った情報をうのみにした者もいた。
大麻は他の薬物の入り口となる「ゲートウエードラッグ」と呼ばれる。危険性を知らせる薬物教育が不可欠だ。