入試民間検定導入 実施延期を検討すべきだ - 琉球新報(2019年9月14日)

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大学入学共通テストへの英語民間検定試験の導入は、地域格差・経済格差などへの対応が不十分で、学校現場に混乱を招いている。
このような状況にあって来年4月から新たな制度をスタートさせるのは見切り発車と言わざるを得ない。文部科学省は、受験生に不公平や不利益が生じないことを第一に考え、延期を検討すべきだ。
英語教育の中で「読む・聞く・書く・話す」という4技能を総合的に育成することは、グローバル社会に対応する上で、極めて重要な課題だ。大学入試でこれら4技能を問う必要性も理解できる。
だからといって既存の民間試験を活用するというのは安直に過ぎる。公正・公平さの確保など、クリアすべき課題が多いからだ。
民間検定試験の会場数、回数、検定料などには、ばらつきがある。離島や遠隔地に居住する受験生は、会場までの交通費や宿泊代で多額の出費を強いられる。地理的、経済的な理由から、受ける検定試験が制約されるケースも生じるだろう。格差を拡大させる結果になりかねない。
全国の国公私立高校計約5200校で構成する全国高等学校長協会(全高長)は10日、制度の実施を延期した上で大幅な見直しを求める要望書を文科相宛てに提出した。
公正・公平が担保されていないこと、地域格差・経済格差などの課題解決の見通しが立っていないことなどを問題点として指摘している。
全高長がかねて強調してきたのは、生徒が希望する検定を、希望する日時に、希望する場所で受験できることだ。
柴山昌彦文科相(当時)は「かえって大きな混乱を招く」と延期を否定した。後任の萩生田光一文科相は会見で「問題があれば、国民が納得できる制度にブラッシュアップしたい」と述べている。学校現場からの異例の要望を重く受け止めるべきだ。
そもそも、複数の民間検定試験を活用する方法が最善だとは思えない。
「話す」「書く」能力を含めた50万人規模の試験を同一日程で一斉に実施するのは極めて困難―と文科省は説明する。これを額面通りに受け取るわけにはいかない。
英語4技能を問う必要があるのなら、文科省が主導して新たな試験を開発し実施するのが本来の在り方だと考えるからだ。
共通テストに参加する予定の「GTEC」「TOEFL iBT」など7種類(6団体)は、それぞれ特徴があり、目的も違う。制度設計が異なる試験の成績から、公平に英語力を測れるかどうかも疑問がある。
4技能を評価する共通の試験を創設し、全ての受験生が希望する場所で受けられる仕組みを整えることはできないのか。
無批判に民間の検定試験に頼るなら、政府の怠慢と言われても仕方あるまい。