英語民間試験 仕切り直しが必要だ - 東京新聞(2019年9月23日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019092302000152.html
https://megalodon.jp/2019-0923-0826-59/https://www.tokyo-np.co.jp:443/article/column/editorial/CK2019092302000152.html

大学入学共通テストに導入される英語民間検定試験を巡る混乱が続く。国は公平性の担保という試験の原点に戻って、延期を含め仕切り直しの判断をする必要があるのではないか。
メニューが全部そろっていないのに、最初に出てきた一皿を選ぶかどうかを決めなくてはいけない。受験生はそんなストレスを感じているのではないか。共通テストに参加する「英検」の予約申し込みの受け付けが始まった。六団体七種類の試験で初めてとなる。
他団体の試験の詳細が示されておらず、大学によっては活用方法をいまだ明らかにしていない。そんな中での選択となるが、英検は当初、予約金三千円は実際に受験しなくても返還しないという方針を示していた。批判を受け急きょ、一週間の返金期間が設けられたが、制度が受験生の立場に立ったものとなっているのか、出だしから疑問は膨らむ。
どこで何回の試験を実施するかなどの詳細が決まらないのは、受験生の意向を各団体が把握しかねていることが大きな原因だろう。だが受験生の側から見れば、各試験がどこで開催されるのか、希望する大学は試験をどう活用するのか決まらなければ、判断はつきかねる。
文部科学省の八月時点の調査では、全国の四年制大学の三割が民間試験を活用するかどうかを公表していない一方、特定の試験を指定する大学もある。
現在の混乱は、採算を度外視しては運営できない民間試験を使用する制度設計のもろさがあらわになったものだともいえる。
離島やへき地の受験生や、経済状況が厳しい家庭の受験生が不利にならないか。格差が生じる懸念も解消されないまま、今に至ってしまった。
民間試験活用のあり方を議論していた五年前の有識者会議の議事録を見ると、積極的に試験導入を主張していた民間企業の委員は「一回あたり受験料は二千円。多分、ITの力を使ったら、そんなの簡単に実現できる」と発言している。しかし実際は一万円を超える試験も複数ある。
十一月には、民間試験の成績を大学入試センターが管理するために必要な「共通ID」を受験生が申請する手続きが始まる。文科省は、期限を区切ったうえで全体像が明らかにできない場合は、延期という選択肢も視野に入れ、現場の不安の解消に当たるべきだ。