[安倍改造内閣と沖縄]言葉に透ける強硬姿勢 - 沖縄タイムス(2019年9月13日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/470393
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第4次安倍再改造内閣が発足した。
沖縄基地負担軽減担当は留任した菅義偉官房長官が引き続き兼務し、防衛相には河野太郎氏が就いた。
組閣後の会見で菅氏は基地負担軽減について「できることを全て行う。目に見える形で実現するという基本方針の下、政権の最重要課題の一つとして取り組んでいる」と語った。
「できること全て」とは何か。負担軽減に向けて前向きな発言にもとれるが、安倍政権下で繰り返し使われてきたこの言葉は、巧みな言い回しにすぎない。
河野氏は、政府が進める名護市辺野古の新基地建設について「普天間基地の危険性の除去を考えると辺野古移設が唯一の解決策」と述べた。「辺野古が唯一」という言い回しも、政府が示し合わせたように使う言葉で、一種の世論誘導である。
新基地建設を巡っては、県知事選や国政選挙などで反対の民意が何度も示されている。できること全てを行っていれば、政権与党がこんなに負け続けるわけがない。
辺野古が唯一というのは地理的優位性や抑止力ではなく、本土が嫌がるから沖縄に置くという政治的理由であることが指摘されている。
さらに沖縄担当相は1億総活躍担当との兼務で、首相補佐官を務めた衛藤晟一氏が起用された。安倍晋三首相は衛藤氏の紹介で沖縄関係には一切触れなかった。
17閣僚の交代で清新さをアピールしたが、沖縄に限って言えばこれまで通り強硬姿勢が透ける改造だ。

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安倍首相は今回の内閣改造を「安定と挑戦」と位置付け、憲法改正に向けた議論を進める強い決意を示した。
改憲を議論する上で忘れてならないのは、日米安保条約地位協定である。日米安保は、日本の専守防衛を米国が補完する構図だ。それに基づいて、地位協定では米軍の特権を認めている。
後を絶たない米軍人・軍属による事件や米軍機による事故などの解決や真相究明が、地位協定に阻まれるケースはいくつも起きている。
地位協定によって県民の人権や生命が脅かされている現状をこれ以上看過することはできない。
翁長雄志前知事は再三「沖縄では憲法の上に地位協定がある」と語っていた。
改憲を語るのなら、日米安保地位協定の見直しも俎上(そじょう)に乗せ、東アジア全体の安全保障を議論する必要がある。

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社会保障の改革も重要政策の柱に掲げた。団塊の世代が75歳以上になり始める2022年度以降を見据え、社会保障費の膨張を抑えるために国民の負担増など「痛み」を伴う改革に踏み込むかが焦点となる。
参院選後の世論調査では安倍政権が優先して取り組むべき課題は「年金・医療・介護」が最も多く、次いで「景気や雇用など経済政策」、「憲法改正」は最も低かった。
安定政権を目指すなら、何よりも国民の関心が高い暮らしの安心・安全を最優先すべきだ。