https://mainichi.jp/articles/20181001/ddm/005/070/063000c
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沖縄県の新知事に、米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対する玉城(たまき)デニー元衆院議員が当選した。8月に死去した翁長雄志(おながたけし)氏に続き、再び「辺野古ノー」の知事を選んだ県民の審判は極めて重い。
安倍政権はこの間、民意に刃向かう形で強引に埋め立て工事を進めてきた。知事選には佐喜真淳(さきまあつし)前宜野湾市長を擁立し、県外から国会議員や地方議員、秘書団まで動員する政権丸抱えの選挙戦を展開した。
それでも玉城氏が勝利したことで、政権が従来の姿勢を見直さざるを得なくなったのは明らかだ。
市街地の真ん中に位置する普天間飛行場は一刻も早い返還が必要だ。にもかかわらず、日米の返還合意から22年が過ぎても実現していない根底に、基地負担のあり方をめぐる本土と沖縄の意識差が横たわる。
日米安保条約に基づく在日米軍の存在が日本の安全保障の要であることについて、国民の間でそれほど意見対立があるわけではない。
問題の核心は、日米安保のメリットは日本全土が受けているのに基地負担は沖縄に集中するという、その極端な不均衡にある。
県外移設を求める沖縄側と、「辺野古移設が普天間の危険性を除去する唯一の選択肢」という政府の主張はかみ合っていない。
民主主義国家では最終的に多数決で政策が決定されるが、議論を尽くしたうえで少数派の意見を可能な限り取り入れることが前提となる。
外交・安保は政府の専権事項だからといって、圧倒的な多数派の本土側が少数派の沖縄に不利益を押しつけるのを民主主義とは言わない。
辺野古移設をめぐる国と沖縄の対立を解消していくにはどうすればよいのか、今こそ政府は虚心に県との話し合いを始める必要がある。
翁長氏が知事に就任した際、安倍晋三首相と菅義偉官房長官は4カ月にわたって面会を拒み続けた。玉城新知事に対してもそんな大人げない対応を繰り返せば、国と沖縄の対立はますます深まるだけだろう。
来年春までには辺野古埋め立ての賛否を問う県民投票も行われる見通しだ。自民党総裁に3選されたばかりの首相だが、問答無用で基地負担をごり押しする手法で状況を動かすことはできない。