国会議員のパワハラ 政治の土台を崩す問題だ - 琉球新報(2019年7月30日)

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政治家として失格だと断じざるを得ない。
自民党の石崎徹衆院議員=比例北陸信越=から暴行を受けたとして30代の男性秘書が警察に被害届を出した。男性は新潟市内で、5月から複数回にわたり、石崎氏から殴る蹴るの暴行を受けたという。新潟県警は今後、詳しく調べる方針だ。
男性は石崎氏の秘書になった直後から「ばか」などと暴言を浴びせられ、車で石崎氏を送迎していた際には「運転が悪い」と車内で怒鳴られた。次第に暴力が増え、連日殴られて腕に青あざができたと訴えている。
自民党新潟県連の聴取に対し、石崎氏は暴言を認めたが、暴行の有無については、捜査に影響があるなどとして明言を避けたという。新潟県連は自民党本部に対し、石崎氏の除名や離党勧告など厳正な処分を求めている。
もし暴行が事実なら、議員辞職にも値する。石崎氏は近く記者会見を開く意向のようだが、一刻も早く真実を明らかにし、自らしかるべきけじめをつけてほしい。
石崎氏は財務省職員を経て2012年12月の衆院選で初当選し現在3期目。17年には、自民党衆院議員だった豊田真由子氏による秘書への暴言・暴行が明らかになった。同氏は自民党を離党後、衆院選で落選している。
豊田氏の不祥事は記憶に新しい。石崎氏は豊田氏の問題から何を学んだのだろうか。わが事として襟を正せなかったことが不思議でならない。
自民党の責任も問われる。明るみに出たパワハラが氷山の一角である可能性はないのか。ほかにも同様の事例がないか調査した方がいい。いずれにしても抜本的な再発防止策を講じるべきであろう。
ドイツの社会学マックス・ウェーバーは、政治家の重要な資質は、情熱、責任感、判断力だと言い、一番の敵は虚栄心だと指摘した。石崎氏の振る舞いの源が虚栄心だとすれば、政治家としての資質を大きく欠いていると言わざるを得ない。
政治家には、人々を導くリーダーとして模範となる行動が期待される。ましてや石崎氏は国のかじ取りを任された政権政党衆院議員だ。人権と倫理を重んじる高度な資質と行動が求められる。今回の問題は、そのような国民の期待を大きく裏切る行為だ。
パワハラの問題は近年深刻化し社会全体でなくす努力が行われている。根絶を主導すべき国会議員がこのありさまでは機運が後退しかねない。社会に及ぼす影響も大きい。
国会議員には、法律を作り予算を審議するという大切な職責がある。パワハラを繰り返すのは人権感覚が欠けているからだ。人権をないがしろにする人たちに政策決定を委ねるわけにはいかない。
政権政党である自民党がこの問題を軽く見るのなら、国民の信頼や期待という政治の土台さえ崩れかねない。