丸山氏の進退 自ら身を引くのが筋だ - 北海道新聞(2019年5月18日)

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/306310
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戦争による北方領土の奪回に言及し、日本維新の会を除名された丸山穂高衆院議員に対し、立憲民主党など野党はきのう、衆院に辞職勧告決議案を提出した。
発言を領土返還交渉の「阻害要因ともなる言語道断の言動」と断じ、わが国の国是である平和主義にも反すると非難した。
野党は与党側にも共同提出を呼び掛けた。しかし議員の発言に関し辞職勧告決議が可決された例はないとして与党内には慎重意見が強く、提出に加わらなかった。
丸山氏は、国の内外に多大な犠牲を出した先の大戦への反省に基づき戦争放棄を定めた憲法の理念をないがしろにした。
しかも騒動を起こしたのは、国会を代表してビザなし交流訪問団に参加中、酒に酔ってのことだ。
明らかに議員の資質を欠く。丸山氏は辞職はしないと言うが、事の重大性は謝罪と撤回では済まない。決議案の可否にかかわらず自らの意思で直ちに辞職すべきだ。
辞職勧告決議案は、これまでほとんどが刑事事件や政治とカネの問題に関連して提出されてきた。
一般論として言えば、言論の府である国会で、時の多数党が発言内容に関し数の力で辞職勧告を押し通すことはあってはなるまい。
しかし丸山氏の言動が看過できないという点では自民党にも異論はないようだ。丸山氏を擁護するつもりはないと受け止めたい。
根室市議会は抗議の決議案を可決する方針だ。本田俊治議長は「元島民や根室市民の感情を踏みにじるもので許されない」と話している。当然の思いだろう。
ところが丸山氏は除名後に、辞職勧告決議案について「この国の言論の自由が危ぶまれる話でもある」とツイッターに投稿した。
確かに言論の自由などの基本的人権は平和主義と並ぶ憲法の基本原則であり、尊重されなければならない。ただ憲法は権利を「濫用(らんよう)してはならない」とも規定する。
つまり、言論の自由とは何を言っても構わないということではない。国会議員なら、なおさらだ。
「戦争しないとどうしようもなくないですか」と暴言を吐いた本人が「自由」を持ち出すとは、開き直りと言われても仕方ない。
民族の尊厳を傷つけ、憎悪をあおるようなヘイトスピーチが許されないのと同じように、戦争を肯定するかのような発言は、決して口にしてはならない。
丸山氏には、実はいまだにその真摯(しんし)な認識と反省がないのではないか。そう疑わざるを得ない。