視点・’19参院選 点字公報 障害者に情報を等しく 論説委員兼点字毎日・佐木理人 - 毎日新聞(2019年7月18日)

https://mainichi.jp/articles/20190718/ddm/005/070/105000c
http://archive.today/2019.07.18-001622/https://mainichi.jp/articles/20190718/ddm/005/070/105000c

選挙で候補者の経歴や政見を掲載しているのが選挙公報だ。公職選挙法では、国政選挙や都道府県知事選挙で発行が義務化されている。なのに視覚障害者には、全ての情報が伝わっていない場合がある。
総務省通知により、視覚障害者には公報の内容を点字や音声にした「選挙のお知らせ」が作られるが、候補者自らが全文や一部の点訳・音訳を辞退するケースが後を絶たない。候補者に費用の負担がないのにである。
全盲の私が残念に思うのは、候補者が障害者への情報提供を軽視しているかのような姿勢が垣間見えることだ。今回の参院選でも、複数の選挙区で同様の事例が起きている。
なぜ点訳や音訳を希望しないのか。ある選管によると、過去の選挙で経歴の点訳・音訳を申し出なかった候補者は「何度も当選していてよく知られているから」と説明した。
だが、経歴を確かめたい場合や、初めて投票する人もいる。それでも選管は候補者の意向に従うしかないという。
「選挙のお知らせ」で全文点訳・全文音訳とうたいながら現実は違う。候補者の情報は、誰にも公平に与えられなければならない。視覚障害者は、情報量が紙媒体より少ないことすら分からない場合がある。
こうした事態を招いているのは、公選法点字や音声の選挙公報に関する定めがなく、選管任せになっているからだ。
日本で点字投票が認められたのは1925年で世界初という。投票所係員による代理投票や投票所内への介護者の同伴もでき、改善は進んでいる。
今回の参院選から公報の電子データ提出が可能になり、音声読み上げソフトへの対応も可能になった。評価はできるが、ネットを使えない人もおり、点訳や音訳の重要性は変わらない。
大切なのは、情報に関する候補者と受け手の意識のずれを放置しないことだ。いくら見直しをしても水泡に帰す。候補者には意識改革を強く求めたい。
視覚障害者は約31万人いる。すべての人に等しく十分な情報が行き届くような方法を確保すべきだ。でなければ公平な選挙とは言えない。国には点字や音声の公報発行をぜひ義務化してもらいたい。