沖国大入試に琉球史 沖縄学ぶ機会増やしたい - 琉球新報(2019年7月9日)

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沖縄国際大が2021年度の一般入試で、経済学部の独立した選択科目として初めて「琉球・沖縄史」を導入する。先史時代、琉球王国時代、薩摩侵攻、沖縄戦、日本復帰後の状況を含め幅広く出題することを想定しているという。
教育界にとどまらず、沖縄全体にとって画期的だ。これまでは大学の専門科目などを受講しない限り、小中高校を含めて琉球・沖縄史を学ぶ機会は少なかった。これを機に、他の大学による同様の取り組みや、中学・高校の入試、教員採用試験、公務員・民間企業の採用試験にも出題が増えることを期待したい。
現在の沖縄に至る琉球・沖縄史を学ぶ機会が、児童・生徒・学生らの間で広がることには重要な意味がある。自身が生まれ育ったり住んだりしている沖縄の歴史を深く知れば、「自分は何者か」を学び、自己認識を深めることができるからだ。
沖縄で現在起きている不条理の本質を理解することにも資する。ドイツのワイツゼッカー元大統領は演説で「過去に目を閉ざす者は現在にも盲目になる」と述べた。
沖縄は琉球王国時代、長期にわたって独立国として本土の歴史に包摂されない独自の歩みを刻んだ。1609年に薩摩に侵攻されたが1879年の琉球併合(「琉球処分」)まで独立性を維持する。併合後は内国植民地のような地位に置かれ、1945年の沖縄戦では本土決戦の時間稼ぎのため「捨て石」にされた。
戦後も27年間、米国統治下に置かれる。52年発効のサンフランシスコ平和条約では本土の独立と引き替えに沖縄が米国へ差し出された形だった。72年の日本復帰後も米軍専用施設の過度な集中が続いている。
これらの沖縄の歩みに通底しているのは、抑圧と差別の歴史だ。琉球・沖縄史を学ぶ意義は知識を身に付けるだけにとどまらない。沖縄の現状を深く理解することにもつながる。沖縄の現在と重なる痕跡を発見できるからだ。
歴史はよく、その時代の勝者の記録といわれる。「琉球処分」という言い方が政府からの目線であるように、琉球・沖縄の人々は少数者・弱者として支配する対象あるいは「他者」として描かれてきた。それがこれまで沖縄の歴史を学ぶ機会を奪ってきた要因の一つかもしれない。
琉球・沖縄史を学ぶ際は、史実に基づきながら沖縄の人々の立場に立って当時を想像することだ。そうすると、これまでのイメージと異なる沖縄像が浮かぶに違いない。
このような機会は、しまくとぅばとともに、沖縄のアイデンティティーや自己決定権の確立に重要な要素となる。日本復帰後、県の基本構想などで長らく「沖縄の自立」が目指されてきたが、歴史を知らずに真の自立はあり得ない。沖縄の人々が自らの歴史を知り、共有することは分断を乗り越える礎にもなる。