残忍な犯行 一体なぜ… - 沖縄タイムス(2019年5月30日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/426108
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事件は川崎市の路上で朝の登校時に起きた。大勢の人たちが行き交う場所で、まったく予期せぬ形で。
28日午前、両手に包丁を持った男が、登校のためスクールバスを待っていた小学生らの列に背後から近づき、包丁を振りかざしながら、小走りで次々に児童らに襲いかかった。
保護者の男性(39)と、私立カリタス小6年の女子児童(11)が死亡、17人が重軽傷を負った。
怒りやもどかしさ、痛ましさがないまぜになったような、やり場のない感情がこみ上げてくるのは、犯行後、容疑者が現場で自殺したからである。
川崎市によると、容疑者は80代のおじ、おばと3人で暮らしていたが、ほとんど会話がなく、長い間、仕事にも就いていなかった。引きこもり傾向にあったという。
2017年11月、別の親族から「おじ、おばに介護サービスを受けさせたい」との相談があり、その後何度か、面接や電話のやりとりがあったことも明らかになった。
しかし、容疑者本人とは接触していなかった。
残忍な犯行には、計画性と強い殺意が感じられる。なぜ、早朝の凶行に及んだのか。カリタス小の子どもたちを襲ったのは当初からの計画だったのか、それとも、襲う対象は誰でもよかったのか。
引きこもりがちの容疑者に医療面から手をさしのべることはできなかったのか、という点も気になるところだ。
容疑者が死亡したとはいえ動機の解明は欠かせない。

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昨年5月、新潟市で下校中の女子児童が連れ去られ、殺害されるという痛ましい事件が起きた。これを受けて政府は、改めて「登下校防犯プラン」を作成し、安全対策の強化を確認したばかりだった。
防犯プランは「通学路の合同点検」や「多様な担い手による見守りの活性化」「集団登下校やスクールバスなどを活用した安全確保」などを打ち出している。
児童生徒をできるだけ1人にしない-そのための集団登下校やスクールバス利用が裏目に出た形だ。
防犯と利便性から、通学時にスクールバスを利用する学校は県内でも増えている。スクールバスを待っていた子どもたちが襲われたことは想定外の事態であり、学校関係者の衝撃は大きい。
これまでの対応をもう一度、点検し直し、安全確保に盲点がないかどうかを確かめてほしい。

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どうしたら子どもたちを守れるのか。今回の事件で改めて突きつけられたこの問いは、学校や保護者だけではとても答えられないだろう。
校区のコミュニティ、教育委員会、警察、自治体、関係省庁が役割を分担しつつ、連携を密にする。
当たり前のことのようではあるが、連携の不十分なところから、その割れ目を突き破るように、事件が起きるケースが多い。
仕事も安らぎの場所も失い孤立状態に陥っている人たちに対する社会的な支援も不可欠である。