https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-913707.html
http://archive.today/2019.05.06-004124/https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-913707.html
在沖米海兵隊の米領グアムへの移転が2024年秋にも始まる。米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設に必然性がないことを示すものだと言える。
日米両政府は12年4月、在沖海兵隊約9千人を国外に移転しグアムなどに分散する在日米軍再編見直しに合意した。06年の合意ではグアムに在沖海兵隊の司令部を移す計画だったが、12年の見直しで司令部を沖縄に残し、在沖海兵隊の主力歩兵部隊である第4連隊をグアムに移すことに変更された経緯がある。
米の軍事専門家は従来から中国のミサイル射程内にある沖縄の米軍基地の「脆(ぜい)弱(じゃく)性」に懸念を示していた。国防予算削減の動きもあり、米政府が中国を過度に刺激せずに周辺同盟国との連携を強化して遠巻きににらみを利かす戦略に変化した背景もある。
沖縄の海兵隊がハワイやフィリピン、オーストラリアなども含めたアジア太平洋各地域への分散配置を進めているのはその表れだ。主力の実戦部隊がグアムに移転するのなら、海兵隊の航空基地である普天間飛行場の代わりの基地を沖縄に造る必然性に乏しいことも明らかだろう。
米軍再編後に沖縄に残る海兵隊の緊急展開用実戦部隊は2千人程度とみられている。これでは大規模紛争への対応は困難だ。さらに実戦部隊は1年の半分以上、沖縄を留守にして東南アジアなどを訓練で巡回しているという。
ミサイル戦争の時代、仮に朝鮮半島や東シナ海で紛争が起きても最初に対処に当たるのは空軍や海軍だという指摘もある。日本政府はこれまで沖縄の地理的優位性と在沖米海兵隊の抑止力などを強調し、辺野古への新基地建設が普天間飛行場返還の唯一の選択肢だと繰り返してきたが、虚構に基づく「優位性」や「抑止力」の説明はもう限界だ。
辺野古の新基地建設は現在、埋め立て予定海域にある軟弱地盤の問題で完成が見通せない状況だ。県の試算によると総工費は最大2兆6500億円に膨らみ、完成に13年かかる。これでは、政府も「世界一危険」だと認める普天間飛行場の返還がさらに遅れてしまう。昨秋の知事選や今年2月の県民投票など何度となく示された新基地反対の民意を持ち出すまでもなく、道理の通らない事業なのである。
グアム移転について米軍は25米会計年度の前半(24年10月~25年3月)に移転を始め、約1年半で完了させる方針だという。日米はグアム移転を普天間飛行場の辺野古移設の進展とは切り離して進めることにも合意しているが、菅義偉官房長官は昨年10月、両者は「結果的にリンクしている」と発言している。
沖縄基地負担軽減担当相も兼ねているはずの菅氏の認識は全く理解できないが、グアム移転を早期に完了させるという米側の方針について、少なくとも自身の発言との整合性を説明すべきだろう。