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天皇陛下が1日、即位された。「即位後朝見(ちょうけん)の儀」で「憲法にのっとり、象徴としての責務を果たす」と述べた。象徴天皇として歩んでいく決意を示したものだ。
この機会に「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」という憲法1条の意味を再確認しておきたい。
この条文は、国家の意思を最終決定する主権を国民が持つことを明示している。平等な社会にあって、天皇だけに特別な地位を与えたのは、日本の伝統や国民感情を考慮した結果とされる。
例外を認めて国民主権と調和させたのが象徴天皇制だ。天皇は限られた国事行為だけを行い、国政に関する権能を持たない。政治に立ち入ってはならない存在なのである。
全ての国事行為について責任を負うのは内閣だ。今後、憲法が尊重されていくかどうかは、助言、承認をする立場にある内閣の姿勢いかんにかかっている。
上皇となった前陛下が1989年に即位した際には「憲法を守り、これに従って責務を果たす」と述べていた。今回は「憲法にのっとり」に変わった。天皇のお言葉は臨時閣議で決定されたものだ。
天皇には憲法尊重擁護の義務があり、憲法に対するスタンスは不変であるはずだ。政権の意向が加わり、ニュアンスを弱めたのであれば、遺憾と言うほかない。
本紙加盟の日本世論調査会が昨年12月に実施した全国面接世論調査によると、天皇制の在り方について79%が「今のままでよい」と回答し、象徴天皇制支持が大半を占めていた。
天皇に対し50%が「親しみを感じる」、19%が「すてきだ」と答えている。皇室に対して、おおむね好感を持っていることが分かる。
今後、このような国民感情に着目した為政者が、自らの政治的意図に沿う形で、天皇を利用しようともくろむ恐れがないとも限らない。
国民統合の象徴である天皇が政治的に利用されることがないように、常に為政者の動きに目を光らせておく必要がある。政治利用の前例をつくると際限がなくなるからだ。
かつて天皇の名の下に戦争に突入し、おびただしい数の命が失われたことを忘れてはならない。
昭和天皇が沖縄を訪問したのは皇太子時代の1度だけだ。昭和天皇実録によると、21年3月6日に与那原沖に停泊した戦艦から上陸し、県庁などを訪れた。その日のうちに船に戻っている。
これに対し上皇さまは皇太子時代を含め11回来県し、戦跡地を訪れるなどした。昭和天皇の時代に沖縄を戦場にしたことなどへの償いの意味もあったのではないか。
陛下も即位するまでに5回沖縄を訪れている。上皇さまの思いが受け継がれているものと信じる。