塚田副大臣発言 国民は事実が知りたい - 東京新聞(2019年4月5日)

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撤回では済まされない。塚田一郎国土交通副大臣が道路予算の計上で政権中枢の意向を忖度(そんたく)したと発言した。撤回・謝罪はしたが行政への信頼が真っ向から否定された。国民は何より事実が知りたい。
問題の発言は一日夜、北九州市内で行われた福岡県知事選自民党推薦候補の応援演説会であった。
安倍晋三首相の地元の山口県麻生太郎副総理兼財務相の地元の福岡県を結ぶ「下関北九州道路」について、自民党吉田博美参院幹事長から建設促進を要請され「総理とか副総理はそんなこと言えない。私は忖度しました」と、聴衆約六百人を前に述べた。
さらに「新年度予算で国直轄の調査計画に引き上げた」と説明。調査費約四千万円を自らの判断で計上したかのように報告した。
麻生派所属の副大臣として麻生氏が推す候補が勝利すれば、大型の利益誘導が可能と誇示したかったようだ。森友・加計学園問題で首相への官僚の忖度が疑われている中でのあけすけな物言いに、開いた口がふさがらない。
翌二日、塚田氏は「一連の発言は事実とは異なるため撤回し、謝罪します」とのコメントを出したが、にわかには信じ難い。
塚田氏は一日の発言で、吉田氏は福岡県選出の大家敏志参院議員と一緒に「『地元の要望がある』と副大臣室に来た」と述べ、吉田氏から「これは総理と副総理の地元の事業」「俺が何で来たか分かるか」と畳み掛けられると「私は物分かりがいい。すぐ忖度します。『分かりました』と」答えたという。事実と異なるという割にはやりとりが具体的だ。
下関北九州道路は地元で「安倍・麻生道路」とも呼ばれている。二〇〇八年、道路特定財源の使途見直しに伴って他の海峡横断プロジェクトと一緒に計画が凍結されたが、その復活に政治が関わったのか否か。民主政治の公平性、透明性を確保する上で当事者の正確な説明が必要だ。
首相は四日の参院決算委員会で自身の関与を否定。塚田氏に対しては発言の撤回・謝罪により罷免はしない考えを示した。だが、安易な幕引きは許されない。公明党石井啓一国交相も主体的に事態解明に当たるべきだ。
野党は塚田氏の辞任を要求するだけでなく、国政調査能力を十分に発揮してほしい。
統一地方選参院選が目前。選挙は税金の使途を考える機会だ。だからこそ、事実関係は速やかに明らかにされなくてはならない。