[法制局長官暴言]まん延する思い上がり - 沖縄タイムス(2019年3月9日)

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耳を疑うような暴言が飛び出したのは6日の参院予算委員会だった。
立憲民主党会派の小西洋之氏は、安倍晋三首相の答弁を時間かせぎだと批判し、「聞かれたことだけ堂々と答えなさい」と声を張り上げた。
小西氏はさらに横畠裕介内閣法制局長官に対し、国会議員が国会で行う質問の性格についてただした。
横畠氏は何と答えたか。
「(委員会で)声を荒げて発言することまで含むとは考えていない」と、たしなめるような、やゆしたような言い方で小西氏の姿勢を批判したのである。
内閣法制局長官は、特別職の国家公務員で、内閣が任命する。国会に提出される法律案が憲法に適合しているかどうかなどを審査する役割を担う。
法制面から内閣を補佐する組織のトップが、露骨な政治的発言で質問者を批判するなんて、一度も聞いたことがない。
8日の参院予算委員会金子原二郎委員長は「職責、立場を逸脱するもので、誠に遺憾だ」と指摘し、厳重注意した。
横畠氏はこの日、あらためて「不適切だった」と謝罪し、発言を撤回した。
だが、このような発言が国会答弁で口をついて出るということを、横畠氏個人の一過性の暴言と片づけるべきではない。
問題の根は深く、深刻だ。 背景にあるのは、安倍政権の国会運営にまん延する「思い上がり」である。

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自民党伊吹文明・元衆院議長は「少し思い上がっているんじゃないか」と、所属する派閥の会合で横畠氏を批判した。議長経験者の実感に違いない。
昨年の通常国会で表面化した政権の相次ぐ不祥事を受け、大島理森衆院議長は、「自省と改善」を求める異例の談話を発表した。
巨大与党に支えられた強引な国会運営に危機感を表明し、対応を求めたのである。
国権の最高機関である国会が、行政監視の役割を果たせなくなったときに何が起きるか。
安倍政権の統治手法の特徴は公開できない意思決定があまりにも多いことだ。どのような議論を経て、誰によってその政策が決定されたのか。
それが覆い隠されれば民主主義は成り立たない。
実際、内閣法制局は、集団的自衛権の行使容認という憲法解釈の歴史的大転換にあたって、内部の検討過程や官邸側とのやりとりを公文書として残さなかった。

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憲法(法)の番人」と評価されてきた内閣法制局は、安保法制を成立させたことで強い批判を浴びた。
今度は、横畠長官の暴言によって「政権の番人」に成り下がってしまうのか。
そんな印象を国民に植え付けただけでも、横畠氏は内閣法制局長官としての資質を欠いているというべきである。 国会の数の力に押されてなあなあで済ますと、政権の「思い上がり」に歯止めがかからない。政治をまっとうな軌道に戻すべきだ。