<縁のカタチ 外国人と生きる>多文化介護(上) 有志で通訳 支援橋渡し - 東京新聞(2019年2月20日)年2月20日)

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「入浴は週三回にして良かった。体もきれいになって、よく眠れる」
昨年十二月。愛知県豊田市の保見団地の一室で、日系ペルー人のヘルパー上江洲(うえず)恵子さん(47)は、住人のブラジル人吉田・デ・ミランダ・エリアナさん(47)から、寝たきりで介護や障害福祉サービスを受ける夫のルイス・カルロスさん(56)の様子を聞き、ポルトガル語を訳してケアマネジャー(ケアマネ)の藤井克子さん(59)に伝えた。
上江洲さんは県高齢者生活協同組合名古屋市)が同団地で運営する訪問介護などの事業所「ケアセンターほみ」の管理者。介護計画を立てるケアマネや訪問看護師らが日本語の話せない利用者を訪ねる際に同行し、通訳する。
一九九四年に初来日したカルロスさんは二〇一七年七月、職場で脳梗塞で倒れ、入院。日本語が苦手な上、後遺症で失語もあり医師や看護師らと十分に意思疎通できず、リハビリも拒否した。エリアナさんも日本語でうまく話せず、診察は、当時の勤務先の同僚に通訳してもらっていた。
半年後に退院が決まったものの、エリアナさんは介護のために離職。カルロスさんは元勤務先で社会保険に入っており、介護保険を利用できる。脳梗塞など特定疾病の場合は六十五歳未満でもサービスを受けられるが、エリアナさんは手続きや高額療養費の払い戻しなど、日本語の説明が理解できず、不安だった。
病院からケアセンターほみに連絡があり、県高齢者生協の藤井さんがケアマネに。打ち合わせに上江洲さんが同行して介護サービスについて説明する一方、「自宅でリハビリをしたい」などエリアナさんの思いを通訳し、在宅介護の体制を整えた。
カルロスさんの傷病手当が切れ、生活保護を申請した際も上江洲さんと藤井さんらが書類作成などを支援。昨年十二月から障害福祉サービスも併用し、介護保険では週二回が利用限度だった入浴を三回に増やせた。エリアナさんは「一人では無理だった」と信頼する。
ケアセンターほみではヘルパー十一人のうち六人がペルー、ブラジル、ボリビア人。上江洲さんを含め三人が通訳を兼ねる。介護保険に通訳サービスはなく、すべてボランティアだ。
外国人ヘルパーの多くは県高齢者生協などが一〇年から開く介護教室の修了生。〇八年のリーマン・ショック後の不況で派遣切りや雇い止めなどで失業した人もおり、当初は「景気に左右されず、必要とされるスキルを」と企画した。
当時、団地では日本語が不自由で支援にたどり着けない外国人の高齢者や障害者が増加。さまざまな習慣や文化を持つ人たちと橋渡しできる人材が求められていた。教室はこれまで八回開かれ、日本人を含め計百三人のヘルパーを育てた。
上江洲さんはケアセンターほみの最初の利用者だった日系ペルー人の女性が忘れられない。重い肺気腫で、余命三カ月と診断されていたが、上江洲さんが声をかけるまで介護保険を知らなかった。「言葉の壁で、必要な支援を受けられない外国人がたくさんいる。少しでも役に立ちたい」

豊田市の保見団地> 1970年代に整備され、都市再生機構(UR)や県営の住宅67棟が並ぶ。90年の改正入管難民法施行で、日系2世、3世らに単純労働と定住資格が認められ、自動車関連産業などで働く日系ブラジル人らが急増。市によると、昨年10月現在、団地のある保見ケ丘地区に住む7262人中、外国人が3977人(54%)。