権力と闘う姿を描く 映画「金子文子と朴烈」 主演チェ・ヒソ「国籍は重要でない」 - 東京新聞(2019年2月14日)

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朝鮮人アナキスト無政府主義者)の妻となり、23歳で獄死した大正時代の日本人女性思想家を描いた韓国映画金子文子と朴烈(パクヨル)」(イ・ジュンイク監督)が、16日の東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムから、順次公開される。主人公の金子文子を演じたチェ・ヒソ(32)は「100年近い過去の時代に自由や平等について考え、行動した女性がいた。国籍は重要ではなく、その姿と精神を知ってほしい」と話す。 (酒井健
貧しい生い立ちの文子(チェ)は、アナキスト朴烈(イ・ジェフン)の「犬ころ」という詩に共感。同志となり、同棲(どうせい)を始める。しかし、危険思想者としてマークされていた二人は一九二三(大正十二)年、関東大震災の直後、警察に拘束される。皇太子暗殺を企てたとして大逆罪の疑いで起訴され、裁判を通じて主張を展開する。
作中で、文子は判事に「人間はみな平等。馬鹿(ばか)も利口も、強者も弱者もない」と訴える。チェによると、文子は貧しく、両親にも愛されなかった女性。つらい過去が「虐げられる人のために生きる。権力に対して自分の意思を貫く」精神の柱になった若き思想家だ。日本の観客には「反日映画と誤解されるかもしれないが、国籍を超えて権力と闘った文子と同志たちに注目してほしい」と望む。
韓国では二〇一七年に公開され、二百三十五万人の動員を記録した。チェは大ヒットした理由を「二人は韓国でもあまり知られていなかった。『こんな人たちがいたのか』という驚きと感動があった」と説明する。韓国政府は昨年、文子に「建国勲章」を授与。「百年近く前の人に今、勲章が出たのは、この映画の影響だと言う人も多い」。
ソウルで生まれ、小学二年から卒業まで大阪市で過ごしたチェは、日本語も流ちょう。文子の手記や裁判記録も日本語で読み込んだという。映画は二回目の主演だが、本作で文子を演じ「役者として強い影響を受けた。主体的に生きる女性に魅力を感じるようになった」と話す。
日本はチェにとって「考え方や生き方を形成する時期に、幸せに暮らした特別な国」。日本の映画もよく見るといい「ぜひ出演してみたい」とアピールする。
一月に韓国で公開された大森立嗣監督の「日々是好日(にちにちこれこうじつ)」を「毎日の価値を語ってくれる映画」と気に入っている。茶道の先生役として出演し、昨年九月に他界した樹木希林を「とても好きな役者さんでした」といたんだ。

 


映画『金子文子と朴烈(パクヨル)』予告編