(バス通学費補助)負担軽減さらに拡充を - 沖縄タイムズ(2018年2月11日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/208023
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高校進学で発生する通学費が、家計を圧迫し、学生生活にも影響を及ぼしている現状を考えれば、必要な支援だ。
県は来年度予算案に「ひとり親家庭高校生等通学サポート実証事業」を盛り込んだ。児童扶養手当を受給する世帯の高校生を対象に、バス通学費を補助する新たな取り組みである。
約700人分として約4千万円を計上。通学定期で半額程度、回数券で3分の1程度の補助を予定している。
学区内の小中学校に通っていた義務教育では、ほとんどかからなかったバス代などの通学費は、外からは見えにくい教育費負担である。負担が家計に重くのしかかり、通学費を工面するためにアルバイトを余儀なくされている高校生も少なくない。
県が昨年まとめた「高校生調査」によると、1カ月当たりの交通費は5千円以上が全体の約32%で、1万円以上が約15%だった。登下校時の交通手段は「家族による送迎」が約半数で最も多く、「バス」は3割前後。家族が送迎する最大の理由が「交通費削減」だった。
通勤のついでというケースもあるだろうが、経済上の理由から時間をやりくりしてという苦しい状況が浮かぶ。 
同じ調査で、困窮世帯の高校生の4人に1人がアルバイト収入を「交通費」に充てていると答えていた。
指摘されるのは長時間のアルバイトが勉強や部活の時間といった高校生らしい生活を奪っていることだ。貧困層の高校中退率の高さ、大学進学率の低さと無関係ではない。

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低所得世帯の高校生の通学費負担では、沖縄子どもの未来県民会議と沖縄都市モノレールの協定によって、モノレールが約半額で利用できる軽減措置が昨年4月から始まっている。対象は高等学校等奨学給付金や市町村の就学援助を受けている人だ。
高校生調査などに協力した学識経験者は、通学に関する支援として県独自の「通学時限定パス」の導入を提言している。通学時のみに使用できるこのパスは、世帯所得によって負担なしから50%まで割引率を設定し、県と企業が割引分を支援する仕組みである。
県内では利用できる公共交通機関がバスとモノレールに限られており、通学支援にはバス会社の協力も不可欠である。
割引があれば公共交通機関を利用させたいと考えている保護者は多く、バス利用促進の面からも取り組みを検討してもらいたい。

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今回のバス通学費補助は所得の低いひとり親世帯、モノレール割引は非課税世帯などが対象で、恩恵を受ける層は限られている。一歩前進だが、まだ足りない。
通学費のほか制服代、修学旅行費、部活にかかる費用など重い教育費負担に悩んでいる保護者は多い。
沖縄の子どもの貧困率は29・9%と深刻で、当事者の頑張りは既に限界に達しつつある。
より厳しい家庭の支援が優先されるとしても、その幅を広げていく努力が必要だ。