脱北の女性に戸籍 現地生まれ「邦人の娘」認定 東京家裁で - 東京新聞(2019年1月28日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201901/CK2019012802000108.html
https://megalodon.jp/2019-0128-1558-39/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201901/CK2019012802000108.html

東京家裁は二十七日までに、北朝鮮で生まれ脱北した三十代の女性を日本人の娘と判断、日本国籍があると認め、日本の戸籍への登録を許可する決定をした。女性の祖母は戦後の帰還事業で北朝鮮に渡った在日朝鮮人の日本人妻。母はその娘で日本国籍があったが、血縁関係を証明する書類はなく、家裁は女性の供述をもとに審査。「具体的で、他の親族の供述とも整合する」とし、日本人女性との親子関係を認定した。
日本につながりがある脱北者が日本に定住する際、法務局への「帰化申請」手続きで日本国籍を得るのでなく、親子関係の立証をして戸籍登録許可を受けるのは異例。専門家は「初めてではないか」(脱北者を支援する北朝鮮難民救援基金の加藤博理事長)とみる。
帰化申請」手続きの審査は経済的安定など条件が厳しい。今回の家裁決定は、生活が苦しい日系脱北者日本国籍を得る道を広げた形。決定は昨年十月三十日付。
女性の代理人の山下敏雅弁護士は、証明書類が乏しい中、家裁が女性の証言を吟味、信用して結論を出したことも柔軟な判断と評価した。
脱北者は通常、韓国籍を得られ、この女性も脱北後に韓国籍となり来日。健康を害しアルバイトと生活保護で暮らしを維持し、生計が不安定として「帰化申請」では不許可の恐れがあった。母、祖母の戸籍を調べ、親戚も捜し出し証言を得た。
女性は共同通信の取材に、日本国籍を得て国内での権利や自由が拡大し「羽を付けてもらい、飛びたいところを飛べるようになった気持ち」と述べる一方、日本の脱北者北朝鮮在住日系人の存在に「関心を持ってほしい」と訴えた。