EU離脱案否決 民意を再度見定めたい - 東京新聞(2019年1月17日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019011702000166.html
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英下院は、政府と欧州連合(EU)との離脱合意案を大差で否決した。大きな混乱を招く「合意なき離脱」回避を最優先に、必要なら離脱期限を延長し、もう一度、民意を見定めてはどうか。
十五日の採決では、離脱案への反対四百三十二票で、賛成二百二票に倍以上の差をつけた。
離脱案は、かつて紛争があった英領北アイルランドと、地続きのEU加盟国アイルランドとの国境管理をどうするかが決まるまで、英国はEUの関税同盟にとどまる「安全策」を盛り込んだ。
最大野党労働党の反対に加え、与党保守党内の強硬離脱派が「EUに永久に縛られる」と反発。EU側は「安全策は一時的」と強調する文書を出したが、議会の不信感を払拭(ふっしょく)することはできなかった。メイ英首相は二十一日までに今後の対応方針を示す。
離脱期限は三月二十九日に迫る。EUと合意のないまま漂流すれば、EUの通関手続きや関税復活で、人の往来や物流は滞って医薬品や食料の供給など身近な生活にまで不安が広がり、約千社の日本企業の部品調達などもスムーズにはいかなくなる。
ここまでこじれたのはそもそも、その前身時代も含め四十六年もの間加盟し一体化してきたEUから、短期間に離脱すること自体に無理があったからではないか。
ここは「合意なき離脱」回避を最優先に考えるべきだろう。まずは離脱期限を延長し、議会でじっくり議論し直してはどうか。EU側も柔軟に対応してほしい。
離脱の是非を問う二回目の国民投票を、メイ氏は「政治の清廉を取り返しがつかないほど傷つける」としてきっぱりと否定する。しかし、二年半前の投票時には予想できなかった離脱に伴う問題や困難が次々と明らかになっている。国民投票の「もろ刃の剣」に気付いた国民も多いはずだ。
最新の世論調査では、残留支持46%、離脱支持39%、残りが未定などだった。ブレア元首相は昨年末、「他の方法が尽くされたのなら、再投票こそ論理的だ。(EUと)三十カ月交渉しても危機の渦中にいる。再投票すべき本当の理由だ」と訴えた。EU司法裁判所は、英国が離脱方針を一方的に撤回できる、との判断を示している。
熟議の結果、合意が得られれば、再度の国民投票を視野に入れてもいいのではないか。議会制民主主義のお手本の国として、最良の道を見せてほしい。