(辺野古土砂搬出中断)法無視は無理筋の証し - 沖縄タイムス(2018年12月5日)

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民意を顧みることなく、何が何でも辺野古に土砂を投入する。そんな強行姿勢が法令を無視することにつながったと言わざるを得ない。
岩屋毅防衛相は4日の会見で、埋め立て用土砂の船への積み込み作業をいったん停止したことを明らかにした。辺野古新基地建設に向け、3日から名護市安和の琉球セメントの桟橋で開始していた。
この問題で玉城デニー知事は(1)桟橋設置の工事完了届がないまま作業したのは県の規則に違反する(2)桟橋内に千平方メートル以上の土砂を保管しており、県赤土等流出防止条例に基づく必要な届け出がない−などと桟橋使用の即時停止を求めていた。
岩屋氏の中断表明は、手続きの不備を踏まえたものだ。
桟橋の使用を巡って防衛省沖縄防衛局と琉球セメントの間でどのようなやりとりがあったのかは明らかではない。
琉球セメントは3日午後に完了届を県に提出したが、受理していない。順序が逆である。届け出前に1隻分は積み込み作業を終えているからだ。別の1隻の積み込みは途中で止まっている状態だ。
県赤土等流出防止条例に関しては県が審査する45日間は事業を止めなければならない。届け出はまだ出ていないが、守らない場合は県は中止命令を視野に入れている。
琉球セメントの桟橋使用は当初予定されていなかった。浮上してきたのは、台風による岸壁の損傷で本部港の使用が認められていないためだ。
法令を無視した土砂の搬出は、強引に埋め立てを進めようとした結果である。「法治国家」とはとても呼べない。

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県議会11月定例会代表質問でも取り上げられ、玉城知事は琉球セメントを立ち入り検査して事実関係を確認する考えを示した。
議員からは桟橋を使用した土砂の搬出は「目的外使用」や「また貸し行為」に当たり、法令違反ではとの疑問の声が上がった。
県が公有財産である海底の占有を認めたのは、桟橋設置目的が「セメントの出荷」や「原料の搬入」などのためであって、辺野古埋め立て工事に使う土砂の搬出のためでないのは明らかである。
防衛局が土砂の搬出ルートを本部地区から、琉球セメントの桟橋に変更したこともルール違反である。県規則では「許可を受けた者は権利を他人に転貸してはならない」とも定めている。常識で考えてみても「また貸し」に当たるとみるのが当然ではないか。

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辺野古新基地建設問題を巡っては国が強引にルールを変えるケースが目立つ。
2014年には米軍キャンプ・シュワブ沿岸部の常時立ち入り禁止区域を大幅に拡大し、工事完了まで「臨時制限区域」とすることを日米合同委員会で一方的に決めた。
防衛局は17年に岩礁破砕許可の期限が切れる直前に新たに申請する考えがないことを県に伝え、期限が切れた後も工事を続行した。
数え上げれば切りがない。法令にのっとった正当な方法では新基地建設ができないのである。計画そのものが無理筋であるというほかない。