首相所信、改憲意欲強まる 「3分の2」発議意識? - 東京新聞(2018年10月25日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201810/CK2018102502000138.html
https://megalodon.jp/2018-1025-0909-47/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201810/CK2018102502000138.html


安倍晋三首相は二十四日の所信表明演説で、臨時国会での自民党改憲条文案の提示に意欲を示すなど、これまでにも増して強い表現で、改憲を具体的に推進していく決意を表明した。改憲勢力だけでの議論も辞さないと読み取れる言葉も。独走気味な首相の姿勢に、他党は警戒を強めている。 (妹尾聡太)

■演説の締め

衆院の三分の二近い議席を占め、強固な政治基盤の上に、その先の時代の国創りを強力に進めた」
演説の締めくくりで首相は、百年前の一九一八年に初の本格的政党内閣を発足させた原敬(はらたかし)に言及。民意に耳を傾けた原の姿勢を見習うと強調しながら、自らも「新しい国創りに挑戦する」と訴えた。
ミソは、わざわざ「三分の二」に触れた点。改憲勢力が今、衆参両院で改憲発議に必要な三分の二以上の議席を有している状況と重ね合わせ、好機を逃さず改憲に「挑戦」する決意を込めたとも読み取れる。

■全議員対象

改憲に直接言及した部分でも熱意は高まった。
一月の施政方針演説では、「各党が憲法の具体的な案を国会に持ち寄」ることを期待していると話したが、今回の演説では「政党が具体的な改正案を示す」と表現。各党案への期待にとどまらず、自民党改憲条文案を憲法審査会で示す宣言のように受け取れる。
また、首相は今回「あるべき姿を最終的に決めるのは国民。私たち国会議員の責任を共に果たそう」として、改憲の是非を問う国民投票の実施を訴えた。施政方針演説の際はこの表現は使わず、自民党両院議員総会で「(改憲を)実現していく大きな責任」を党内に呼び掛けただけだった。全党派の国会議員に広げて「責任」を求めた形だ。
さらに、首相は今回「できるだけ幅広い合意が得られると確信している」とも指摘。「できるだけ」という限定的な表現は、改憲に反対する野党の理解が得られなければ、最終的に改憲勢力だけで改憲原案づくりを進めることも視野に入れているように映る。

■距離を置く

一方で自民党は、野党が求める国民投票法改正案の審議を憲法審で先行させるなど、当面は円満に進めていくという発信に努めている。最初から強引に進めて世論を敵に回すのは得策でないからだ。首相に近い閣僚経験者は「まずは憲法審をどう動かし続けるかを戦略的に考える」と話す。
しかし、他党は二十四日、改憲から距離を置く言動が目立った。
公明党山口那津男代表は両院議員総会で、臨時国会の重要課題として災害対策などを訴えたが、改憲には一言も触れなかった。
立憲民主党枝野幸男代表は、首相演説に関し「首相は憲法の改定に権限を持っていない。意味のない妄言だ」と記者団に指摘。国民民主党玉木雄一郎代表も記者会見で「権力者が描きたい夢を書き込むのが首相の憲法観だとよく分かった」と厳しく評価した。