https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/332621
http://archive.today/2018.10.21-002309/https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/332621
県の「待機児童対策特別事業」によって、2017年度までの6年間に、17市町村の69保育施設が認可園に移行した。全国ワーストといわれる待機児童問題の解決には必要な支援だが、その陰で退園を余儀なくされている園児がいることはあまり知られていない。
保育の「量」の確保に追われ、子どもの利益や保護者ニーズが後回しにされてはいないか。
本紙の調査によると認可外保育所の認可化を進めた17市町村のうち、他市町村からの越境通園となる「広域入所」を認めているのは那覇、沖縄、嘉手納、中城の4市町村にとどまった。
他方、浦添、宜野湾、南城、南風原の4市町は広域入所を認めておらず、退園児が出た。認めない理由は、「待機児童解消の優先」や「入所申し込み増が見込まれる」などである。
確かに今年4月時点の待機児童率は、南風原町が10・11%と全国一、南城市も7・33%で6番目に高く、問題は深刻だ。
保育サービスは住民票のある場所で受けるのが基本で、保育の実施義務を担う市町村が待機児童解消に躍起になるのは理解できる。
しかしだからといって、現に在園する子どもの保育を受ける権利を奪うようなことがあってはならない。
行政の事情で、子どもたちが慣れ親しんだ園を離れ、友だちとも別れなければならないというのは、あまりに理不尽だ。■ ■
在園する子どもの保育を受ける権利を巡っては、西原町議会が18日、保護者から出された「認可園移行による在園保障」の陳情書を趣旨採択した。
独自の保育プログラムで町外からも多くの子どもが通う認可外保育所が本年度末に閉園し、隣接地に認可園が新設されるのに伴い、町が「町内の待機児童解消を優先する」との考えを示しているからだ。
「一緒に卒園すると伝え育ててきた子どもに、どう説明していいのか分からない」「新しい園に入れなかった場合、職を失うかもしれない」など保護者からは切実な声がもれる。
那覇市など広域入所を認める市町村では、退園児がでないよう定員を設定したり、特例によって在園保障するなど柔軟な対応をとっている。
優先すべきは子どもの育ちであり、保育継続のための手だてに知恵を絞るべきだ。■ ■
1998年の児童福祉法の改正で、自治体間で調整を図れば広域入所が可能となった。
認可化移行に限った問題ではなく、職場や祖父母宅に近い方が利用しやすいなど、居住市町村以外の保育所を希望する保護者は増えている。
保護者ニーズにもっと目を向けなければ、待機児童対策は進んでも、保育サービスに対する満足度は上がらない。
県待機児童対策行動指針は、「地域間の需給調整をする有効な制度」とし広域入所に触れている。市町村間の調整促進には、県も汗をかく必要がある。