[待機児童対策]現場の処遇改善進めよ - 沖縄タイムス(2019年6月16日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/433311
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受け皿不足と同時に深刻なのが保育士不足である。2019年度末までの「待機児童ゼロ」の道のりは険しい。
希望しても認可保育所などに入れない県内の待機児童が、今年4月時点で1702人に上ったことが明らかになった。
待機児童数を申込者数で割った「待機児童率」は2・80%。都道府県別の集計はこれからだが、全国ワーストだった昨年同様、目立って高い状況は変わっていないと推測される。
中でも南風原町は待機児童率が9・92%で、およそ10人に1人という深刻さだ。県内7市町村で5%を超えている。
完全失業率改善の数値が示すように、人手不足の中、働く親が増え、保育ニーズが高まっていることが背景にあるという。県民所得が低く、子育てしながら働く女性が多いことも影響しているとみられる。
押さえておかなければならないのは、特定の保育所を希望するなどの理由で待機児童にカウントされない「潜在的待機児童」が1568人もいることだ。
10月から始まる「幼児教育・保育の無償化」で、さらなるニーズの増加が予想されている。
当初、県は17年度末までとしていた待機児童ゼロの目標を2年先送りした。当事者にとっては切羽詰まった問題であり、再度の先送りは許されない。
保育需要を正確に把握し、受け皿整備を確実に進める必要がある。

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保育士不足も待機児童が解消されない要因の一つだ。
待機児童率が突出して高かった南風原町は、保育士13人の不足で51人の園児を受け入れられなかったという。
昨年4月には県全体で260人の保育士が不足し、園児930人余りの入所制限が生じている。
認可保育園には「0歳児3人につき保育士1人以上」など国が定めた基準があり、保育施設増に保育士の確保が追いついていない実態がある。
激化しているのは自治体間の「保育士争奪戦」だ。一時金支給や家賃補助で保育士を呼び込んだり、保育士の子どもを認可園に優先入所させる取り組みなどでしのぎを削っている。
さまざまな支援をアピールする争奪戦の過熱は一方で、財政に余裕のない近隣自治体の保育士不足を招く恐れがある。自治体の努力も限界に達しつつある。

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保育士が足りないことと、処遇の問題は深くつながっている。資格を持ちながら働いていない「潜在保育士」の多さは、賃金の低さや体力を使う仕事への不安、子育てとの両立の難しさなどを示している。
政府は賃金アップなど処遇改善策に取り組んでいるが、全産業平均より7万円以上も低い月給を少し上げるといった付け焼き刃の対策で保育士は定着しない。
さらなる処遇改善はもちろん、保育士の配置人数を増やすなど踏み込んだ対策が求められる。