<金口木舌>不条理と闘った歴代知事 - 琉球新報(2018年10月1日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-811480.html
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昨年ハワイを訪ねた時、県系人の言葉に問題の根深さを知った。「翁長雄志知事の子は中国人と結婚した」。新基地建設を巡り、沖縄の民意を政府にぶつけてきた翁長氏へのデマ。拡散は予想以上だった

▼翁長氏の死去で早まった知事選は異例づくし。超短期決戦に、台風24号が直撃する。候補者ポスターの撤去や繰り上げ投票、相次ぐ日程変更…。まさに嵐のような慌ただしさだった
▼新知事に玉城デニー氏が決まった。復帰後では第8代。県民の願いは沖縄ばかりに負担を押し付けず、穏やかな暮らしを実現すること。異例を引きずるのはごめんだ
▼「基地ができる前まで普天間に人はいなかった」「沖縄経済は基地なしでは成り立たない」との事実誤認を今も耳にする。翁長氏は自身に向けられたデマを県議会答弁で否定した。そのやりとりは怒りを通り越して悲しい
▼歴代知事は沖縄への無知や偏見、不条理とも闘った。復帰後初代知事の屋良朝苗氏は破れた履物を意味する「弊履(へいり)」に例え、「沖縄県民の気持ちと云うのはまったく弊履の様にふみにじられる」と憤った
▼「知事」の「知」は治める意のほか、変化に応じて的確に判断できる頭の働きも指す。嵐が過ぎて沖縄の新たな4年間が始まる。新知事はどうかじを取り、進んでいくのか。県民は弊履にあらず。1票に託した思いが踏みにじられてはならない。