http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018082402000149.html
http://web.archive.org/web/20180824032607/http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018082402000149.html
マース独外相が日本に連携強化を呼び掛けている。ドイツ側からの強いラブコールは異例だ。トランプ米大統領の米国第一主義によって揺らぐ多国間による国際協調を、協力して支え続けたい。
マース外相は先月、都内の大学での講演で、「何十年もかけて培われた同盟関係が、ツイッターの二百八十文字で疑問に付されてしまっている」とトランプ氏を批判した。その二百八十字の短文とは、米国の新たな保護主義や米国第一主義を指す。
日独とも一国だけで主導権を握るには小国だ。だが、ルールを押し付けられる立場に甘んじなければならないわけではない。それぞれの強みを束ねれば、国際秩序をつくる原動力にはなれるかもしれない。日独関係の基礎は自由、民主主義、法の支配という共通の価値観だ−とマース氏は主張する。
日本と、ドイツを含めた欧州との同盟強化の具体的な形が、日本・欧州連合(EU)間の経済連携協定(EPA)だ。トランプ氏の保護主義に対抗する形で世界最大の自由貿易圏を作り、欧州産品の輸入関税を引き下げる。
ともに敗戦国だった日本とドイツ(西独)は自由主義陣営の一員として、経済的繁栄を享受してきた。「問題がないのが日独間の懸案」とまで言われた穏やかな関係。それを踏み込んで推し進めようというのがマース氏の提案だ。
背景にあるのは、トランプ氏の米国に対する強い危機感だ。
北大西洋条約機構(NATO)加盟国に防衛費負担増を要求、EUを敵呼ばわりまでした。攻撃の矛先は欧州だけではない。温暖化防止のためのパリ協定からの脱退を表明し、エルサレムへの在イスラエル大使館移転を発表してパレスチナ人の神経を逆なでした。
イラン核合意からの離脱と対イラン制裁は、日本の原油取引にも影を落とす。
米国が中心となって築いてきた国際秩序は今、米国によって壊されつつある。
さらに、ウクライナ南部クリミア半島併合などで国際秩序に挑戦するロシア、自国に有利なようパワーバランスを変えようとしている中国の存在も、マース氏が日独結束を説く理由だ。
来年、日本は20カ国・地域(G20)議長国、ドイツは国連安全保障理事会非常任理事国で、ともにリーダーシップを発揮できる立場となる。
国際協調主義の世界世論を盛り上げたい。